いつもお読みいただきありがとうございます。
柔整師向上委員会KZです。
整骨院でもよく目にする腰痛ですが、しっかりと特徴を理解し、症状別にアプローチを組み立てていますか?
闇雲にただ、腰をマッサージするなんて事が無いように構造から理解してアプローチの幅を増やしていきましょう!(^^)!
また、評価も大雑把に体幹の前屈や回旋、といった程度に評価していませんか?
腰椎について細かく評価・アプローチ出来るとより痛みの改善やADLが改善されていきます。
この記事を読んで腰椎の特徴を知り、臨床に落とし込んでみてくださいね(^^)
もくじ
腰椎の特徴的な役割
動作時、主にどのような働きをするか、代表的な特徴を書いておきます。
①荷重を吸収・分散する
腰椎は上半身からかかる荷重を受けたとき、ショックアブソーバーのように負担を吸収して分散する働きがあります。
普段は気にせずに、生活していますが、重力と体重と動きによる荷重がかかっています。
荷重を吸収出来ないと体のあちこちに衝撃が加わりすぐに痛めてしまいます。
腰椎は、他の椎体に比べて大きくできていて荷重に強い構造です。
さらに、腰椎の生理的前彎により衝撃を吸収しやすいです。
脊柱は彎曲があると、真っ直ぐな状態と比較すると約10分の1程度に吸収してくれるといいます。
この生理的前彎が崩れ後彎したり過前彎になると衝撃を吸収出来ず、椎体や他の部位の痛みにつながります。
また、股関節や膝の使い方を間違えていると衝撃の多くを腰椎で吸収しようとしてしまい、元から前彎があるので過前彎となっていしまいます。
よく姿勢が悪いというと、後彎ばかり考えてしまうことも多いですが、過前彎も少なくないので、ここにも目を向けることは大切です。
②脊椎や股関節を介し、力を上肢↔下肢に伝える
腰は体の中心に近く、
体幹や上肢が体幹を介し、連動して力を伝達させるという力学的に重要な役割を担っています。
腰椎がある程度動くからこそ大きな動きも可能になりますし、腰椎が安定するからこそ上肢↔下肢の力が逃げずにしっかりと伝わるのです。
③腰椎は大きな可動性とスタビリティジョイントとしての機能を持つ
腰椎は大きな可動性を有しています。
腰椎が持つ可動域のお陰で前屈みになったり、体をのけぞることが出来ます。
矛盾するようですが腰椎はスタビリティとしての機能も持ちます。
上記したように安定するからこそ力が逃げずに伝わります。
スタビリティ・モビリティについてはこちら
腰椎がスタビリティとしての機能を発揮するためには上下にある股関節と胸椎が確りと可動してモビリティとして働かないといけませんし腰椎の安定性により股関節と胸椎が働けるとも言えます。
可動域が広いのに安定性も必要ということは、アライメントは崩さずに決まったポジション内で安定しながらも可動域は有しなければいけないということです。
動きながらも安定するためには股関節と胸椎との連動性と腰部のインナーユニットの働きが大切です。
腰椎の特徴的構造
腰椎の形状からくる特徴を書いていきます。
可動域が広い
腰椎は他の椎体よりも広い可動性を持っています。
胸椎と違い、胸郭への連結がないため、可動域が広いです。
腰椎の可動域
屈曲/伸展 | 側屈 | 回旋 | |
T12-L1 | 12° | 8° | 2° |
L1-L2 | 12° | 6° | 2° |
L2-L3 | 14° | 6° | 2° |
L3-L4 | 15° | 8° | 2° |
L4-L5 | 17° | 6° | 2° |
L5-S1 | 20° | 3° | 3° |
胸椎の可動域
屈曲/伸展 | 側屈 | 回旋 | |
C7-T1 | 9° | 4° | 8° |
T1-T2 | 4° | 6° | 9° |
T2-T3 | 4° | 6° | 8° |
T3-T4 | 4° | 6° | 8° |
T4-T5 | 4° | 6° | 8° |
T5-T6 | 4° | 6° | 8° |
T6-T7 | 5° | 6° | 8° |
T7-T8 | 6° | 6° | 8° |
T8-T9 | 6° | 6° | 7° |
T9-T10 | 6° | 6° | 4° |
T10-T11 | 9° | 7° | 2° |
T11-T12 | 12° | 7° | 2° |
胸椎と比べると回旋の可動域が狭く、屈伸の可動域が広いことがわかります。
下位腰椎にいくほど屈伸の可動域が広くなっていきます。
これは胸椎の椎間関節面は前額面を向いていて、運動ベクトル水平面にちかく、回旋しやすい構造で、
腰椎は関節面が矢状面を向いていて運動ベクトルが前後方向に向いてるので、回旋を制限しやすく、屈伸しやすい構造だからです。
これらを考慮すると腰椎は元々回旋をしにくい部位なので、回旋ベクトルの負荷をかけ過ぎると損傷に繋がります。野球のバッティングで良く腰を回せと聞きますが、あれは胸椎と股関節により回旋を作らないといけません。
回旋は胸椎、屈伸は腰椎というように構造に合った動きを再学習させると疼痛改善、椎体インナーマッスルを目覚めさせる事に繋がります。
前方滑りを起こしやすい
腰椎の椎間関節は、上記した構造でさらに関節面が矢状面と平行に近いので前方転位を制限しにくい構造をしています。なので前方滑りを起こしやすいのです。
これらを考えると手技療法の組み立ても変わってきますね(^^)
脊柱は緩くS字のカーブで、頚椎は前彎、胸椎は後彎、腰椎は前彎しています。
腰椎の前彎と仙骨の前傾の関係上、L5-S1で構成される腰仙関節では約35°の傾斜角度がついており、立位では常に前下方へすべり落ちようと上半身の体重が剪断力として、かかっています。
胸椎・股関節の可動性や仙腸関節の可動性に制限が起きると腰仙関節が無理をするので、剪断力が強くなります。
近接の関節のアライメントや運動パターンを修正するアプローチも視野に入れておきましょう。
仙腸関節の可動性についてはこちら
靭帯が強固
腰椎は、他の椎体よりも前縦靭帯・後縦靭帯が強靱で、前・後屈時にアライメント異常が起きないように制御してくれてます。
腰椎は屈伸の可動性が大きいので、椎体が移動する負荷が強くかかりますが、その時の負担を軽減してくれています。
上記したように、前方転位に対する骨性制限がないので、靭帯が重要です。
しかし、靭帯は筋肉と違って、トレーニングにより強くは出来ません。
インナーマッスルの脆弱化や不良姿勢・腰椎のアライメント不良により靭帯に伸長ストレスが過剰にかかると、不可逆性の緩みがかかります。
靭帯に頼りながらも、靭帯を守る運動を学習させること、アライメントを整えておく事が大切です。
椎弓の周囲には、黄色靭帯、棘間靭帯、棘上靭帯も制御に関与してくれています。
これらの靭帯を守るには「インナーユニット」の働きも重要です。
インナーユニットは、腹横筋・横隔膜・多裂筋・骨盤底筋群・腸腰筋の5つから構成されます。(腸腰筋はインナーユニットに入らない場合もある)
・仙腸関節・腰椎の安定
・腹圧の向上
・姿勢制御
上記のような役割があり、腰椎のスタビリティの向上にも関与しています。
インナーマッスルは意識的に力を入れる筋肉ではないので、トレーニングで刺激したり働きやすいアライメントやバランスを整備して無意識に働いてくれるようにするのが大切です。
腰部の治療のポイント
腰痛や亜急性捻挫・それらが起因する椎間板ヘルニア(LDH)など腰椎性疾患を施術する時は、上記した構造を理解してアプローチしていきます。
大きな外傷でない場合は腰椎の捻れや前方滑り等、局所に負荷が強く加わり損傷を起こしやすくなっています。
なぜ発症したのか、どういう負荷が加わっているかを推理していきましょう。
よく見かけるのは腰椎がモビリティとして働いてしまっているために負荷が強くなり、緩みによりポジショナルフォルト(アライメント不良)から捻挫を起こしやすくなっているパターンです。
ですので、上下のモビリティージョイントである胸椎・股関節の可動性を十分に出し、sijののアライメントも整え、腰椎整復を行い、後に安定性を高めるようなエクササイズ等を処方するのが定石だと思います。
姿勢アライメントも分析し、例えば骨盤が過前傾の方には腸腰筋のリリースや腸骨の後傾方向や外旋方向の整復、腰椎の前屈方向への整復、後に腹直筋の深部・下部繊維へのエクササイズ。
骨盤が後傾の方には、殿筋のリリースや骨盤の前傾方向や内旋方向の整復、腰椎の後屈方向への整復、後に多裂筋へのエクササイズを処方したりと症状や姿勢、動作を分析しながら反応も考慮しクリニカルリーズニングを組み立てます。
こちらに腰部の前・後屈時に起こる各組織への影響も載せておくので参考にしてください。
前屈 | 後屈 | |
髄核 | 後方移動 | 前方移動 |
椎間孔 | 椎間孔径の増大 | 椎間孔径の減少 |
椎間板 | 椎間関節より椎間板の負担増大
繊維輪前部の圧縮 繊維輪後部の伸長 |
椎間板より椎間関節の負担増大
繊維輪前部の伸張 繊維輪後部の圧縮 |
関節包・靭帯 | 黄色靭帯、椎間関節包、後縦靭帯、棘上・棘間靭帯などの伸長 | 前縦靭帯などの伸長 |
腰椎に対する運動療法
上記のしたように、胸椎と股関節に対して運動療法を処方し、腰部痛が減少したら腰椎に対して運動療法を行います。
腰部の代表的な運動療法をのせておきます。
腰部のエクササイズ①
①.腹臥位で両手を胸の横につきます。
②.両手でベッドを押し上体反らしのように体を起こします。腕の力でアシストしながらも背筋も使わせます。
③.10回程度繰り返します。
・どこを中心に体を起こすかを症例により変えていきます。
・頚部が反りすぎない程度に顔も起こします。
・痛みがあるならば中断します。
腰部のエクササイズ②
①.背臥位で両足を浮かし両膝を曲げ股関節と膝が90°曲がった状態にします。
②.①をキープしながら軽く腹部を凹ますように腹横筋を収縮させた状態をキープします。
③.軽く顎を引き上部頸椎からゆっくりと背骨を1個ずつゆっくりと持ち上げていき肩甲骨の下角まで持ち上がったら、背骨を1個ずつ戻していくように②の姿勢に戻ります。10〜20回繰り返します。
・ゆっくり行うことで大腰筋や腹斜筋や腹直筋の深部繊維を刺激します。
腰部のエクササイズ③
股関節を意識したスクワットを行います。
これをおこなうと、腸腰筋・多裂筋をしっかり刺激し、アウターマッスルの中でも固くなりやすいハムストリングをしっかり柔らかくする効果があります。
①.肩幅ぐらいに足を開いて立ちます。
②軽く顎を引き、軽くお腹をへこませ、肩甲骨を外旋させるように軽く胸を開きます。(教科書的には外旋という動きはありませんが、この動きは非常に大事です。)
③.股関節の前面(両足のつけ根、鼠径部のビキニライン)を意識します。
④.遠くの椅子に座るようなイメージで股関節から骨盤を前傾させ、お尻を突き出して上体をやや前に倒します。
⑤.股関節から45°まで上体を倒したら、猫背にならないように腰と背骨を起こしながら、膝が90°に曲がるまでのハーフスクワットを行います。
⑥逆の手順で立位に戻りましょう。
10回繰り返します。
ポイントは、
・膝は爪先の少し前まで。それ以上は前に出ないようにする。
・体重は踵や爪先ではなく足の裏の真ん中に乗っているイメージで。
・お尻を突き出す時は反りすぎず、お腹をへこませ、丹田も意識する。特に骨盤過前傾の出っ尻姿勢の人は注意する。お腹を突き出すと腰椎が前方滑りを起こすので腰はスタビリティを保ち股関節を支点に前屈していきます。
・腰だけで反らさずに、背骨と頭も後ろに引く意識を持つ。このときに首は反らさずに、顎を引きながら前を見ておく。
・膝や腰がいたい人はやらない。
・しゃがむ時に膝が外や内に曲がらないように真っ直ぐしゃがむ。
・フォームが大事なので、負荷や回数よりもこのポイントをしっかり押さえましょう。
間違ったやり方は膝を痛めますので気をつけてください。
最後に
勉強お疲れ様でした。
脊柱の中でも、それぞれの椎体に構造がありますのでそれを理解し技術に応用しましょう。
構造を理解した上で、アライメントの回旋や滑り等を整復していけるようになると、わからずに適当に矯正をするよりも的確なハンドリングや応用力が身に付きます。
触診も確りと行う癖をつけましょう。
その上で腰椎の生理的な前彎やスタビリティとしての機能・インナーユニットを回復させるということも大切ですね。
この記事を読んで腰の施術力を上げていきましょう!そこから各メソッドが活きてきますし、逆にメソッドは必要無くなってきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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