骨盤の構造を復習する。(仙腸関節含む)

ここでは骨盤の基本的な構造を復習していきましょう。

骨盤の構成

骨盤は仙骨(せんこつ)と、2つの寛骨(かんこつ)から構成されています。
そして、寛骨は3つの骨から構成されています。

腸骨・恥骨・座骨(ちょうこつ・ちこつ・ざこつ)です。

骨盤帯の機能的特徴

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内臓を保護している

動物はナックルウォークのため、腹壁で内蔵を支えていますが、二足歩行である人間は、腹壁ではなく骨盤帯によって内臓を支えています。

また、骨の中でも大きくて頑丈な骨盤は内蔵を外力からも保護しています。

尿漏れを抑制している

恥骨から尾骨にかけてハンモック状に骨盤底筋群が走しっています。

内臓が下垂しないように支えている役割もありますが、排尿、排便、月経、出産のなどにも深く関連していて、近年注目されている、産後矯正の領域では重要な筋となります。

下肢と体幹を連動させている

体幹や上肢の負荷を分散させたり、骨盤を介して下肢と体幹が連動して力を伝達させるという力学的に重要な役割を担っています。

骨盤がしっかり動くからこそ大きな動きも可能になりますし、骨盤が安定するからこそ体をしっかり使えます。

妊娠・出産

妊娠・出産により胎児が通れる、柔軟性を有しています。

妊娠末期にはホルモンにより靱帯が、緩むと骨盤は可動性を持ちます。

骨盤の可動部

骨盤内の可動性は仙腸関節(SIjoint)と恥骨結合によって作られます。

仙腸関節

仙腸関節の関節面は耳状面と呼ばれ、その名の通り、耳のような形状をしています。
仙骨と寛骨の耳状面は完全に一致しており、わずかに滑り運動を可能としています。2㎜~5㎜程度の可動性といわれていますし、癒合して動かない方もいます。

とても大事で私もよくアプローチしますが、仙腸関節は存在してない方もいるので、すべては仙腸関節!という考えを持ってはいけません。

この関節面は人によって形状が違うと言われており、凸面と凹面が反対になっていたりする場合もあります。

形状が違うと動きも変わってくるため、ワンパターンに整復をせず、人に合わせ、治療反応を確認していく事も大事です。

SIJ は細かい溝や隆起が多く、楔形の構造に加え、広範囲に存在する靭帯によって安定性を保っています。

仙腸関節の靭帯としては、腸腰靭帯、前仙腸靭帯、後仙腸靭帯が挙げられます。
これらの靭帯によって仙腸関節は固定され、余計な動きを抑えています。

仙腸関節に直接作用して動かす筋肉はありませんが、起立筋や多裂筋、胸腰筋膜と大臀筋による筋連結、梨状筋によっても安定性を保っています。

引用

仙骨の動き

仙腸関節の、仙骨が前屈する頷き運動をニューテーションといいます。

SIjointの下部が締まる肢位となります。仙骨がニューテーションしていなければ背筋力を上手く使えません。

運動時にはまず仙骨がニューテーションし、体軸よりもやや前傾した状態になると体幹を安定させることが出来ます。

仙骨が後屈する起き上がり運動をカウンターニューテーションといいます。

SIjointの下部がが緩む肢位となります。

締まると損傷をしにくくなりますが、締まりすぎも障害を起こす原因となったり、逆側のSIjointの緩みの原因となる事があります。

また仙骨が前傾していても仙骨に対し、腸骨が過度に後傾していると仙腸関節の上部が緩み、負担がかかりやすくなります。

これが仙腸関節に対しての仙骨の動きとなります。

引用

腸骨の動き

仙骨に対する腸骨の動きとして、以下のようなものがあります。

in(内旋):寛骨が恥骨結合に近づく
ex(外旋):寛骨が恥骨結合から離れる
外転:坐骨結節間が開く
内転:坐骨結節間が閉まる
前傾:仙骨に対して寛骨が前に傾きSIjointの上部が締まる動きです。

後傾:仙骨に対して寛骨が後ろに傾きSIjointの上部が締まる動きです。

仙腸関節の動きは諸説ありますが、その人の状態を見極めることが大事です。

PSISやASISの位置関係、腸骨陵の高さの左右差をリスティング(骨の位置異常を触診)し、骨盤の立体的なイメージを持つことです。

また、腸骨は10°~15°程度の前傾がニュートラルなポジションで可動性と安定性を保ちやすく、腰椎や股関節との位置関係も良いと言われています。

PSISから水平に引いた線よりもASISが指1~2本分下にある位置が前傾10°です。

それ以上、下にASISがある場合は過前傾、ASISがPSISと水平位置または上に位置してる場合は過後傾となります。

腸骨のリスティング
A:前方     P:後方  I:下方  S:上方

偏位の種類4つを組み合わせ

先程の動きとも照らし合わせます。

例  腸骨 過前傾  右腸骨AS in 左腸骨PI ex

動的アライメントも確認して、モビリゼーションや整復を行ったり、ROMexを行うことにより良好な運動パターンを学習させ、痛みの減少や可動域の拡大を得ていきます

恥骨結合の動き

腸骨の動きの支点となりますので、この部位の構造もおさえておく必要があります。

恥骨結合は、解剖学的には線維軟骨でできており、内部には中裂と呼ばれる空間があり、歩行時にはこの空間が拡大して、クランク軸構造を形成します。

このクランクによりジャイロ運動が起こり左右の腸骨が別々の動きを同時に行えるのです。

前恥骨靭帯、後恥骨靭帯、上恥骨靭帯、恥骨弓靭帯、腹筋群、内転筋群によって恥骨結合の安定性を保ってます。

産後の女性はリラキシン等のホルモンの影響で靭帯が緩み、恥骨結合も緩んでしまいます。

酷い方ではレントゲンでもハッキリと恥骨結合がずれて亜脱臼の状態になってしまう方もいます。

なので関与している筋郡は確りとチェックしときましょう。

骨盤帯の安定するポジション

骨盤帯において理想的な位置とは、締まりの肢位(close-packed-position)です。

上述しましたが、仙腸関節を直接締める筋肉は存在しませんので、仙腸関節を締めるには、腸骨を動かす筋肉、仙骨を動かす筋肉、仙骨と寛骨を連結する靭帯が重要となります。

SIjointを締める時に特に重要なのは、多裂筋、最長筋、腸肋筋、それらを使ったときに緊張する胸腰筋膜です。

胸腰筋膜は広背筋→胸腰筋膜→対側の大臀筋への連結から起こる、「後部斜方向安定化システム」の機能によって仙腸関節を締める方向へと力が働きます。

また、仙結節靭帯はスーパーフィシャルバックラインでハムストリングスと脊柱起立筋と連結していて収縮して緊張が高まると、仙腸関節の安定化に作用します。

アナトミートレインの筋膜連結は骨盤を通っている物が多いので、骨盤と全身が繋がっていると言われる理由も解剖学的に証明できますね。

骨盤に対するアプローチ

寛骨に対する仙骨、仙骨に対する寛骨、股関節と脊椎それぞれを評価してアプローチして結果を比べることが大事です。

例えば、腰に痛みがある方の仙骨に対する寛骨の評価が左の腸骨PI、寛骨に対する仙骨の評価から右側屈方向へ偏位、左股関節の内旋tightとすると、左臀部後方の組織に癒着がありそうだと予測できます。

色々な部位を視野にいれ評価してから共通する部位に対してアプローチすると一度に複数の要素が影響を受け良い反応が出ます。

筋肉に対するアプローチとしては、アナトミートレインを考慮したターゲットの筋を持続的に押圧してリリース、IDストレッチ等で緩めたり、PNFで促通させ出力をあげます。

関節に対するアプローチとしては、仙骨・寛骨それぞれずれてる方向や動きにくい方向を評価し、整復方向へ徒手的に誘導して制限が解放されるまで待ったり、整復位置を保ちながらROMexを行ったりします。。

おさらい

・骨盤帯の特徴を覚えておく。

・仙腸関節のアプローチには、仙骨に対する寛骨のポジション、寛骨に対する仙骨のポジション両方を考える

・仙腸関節や、骨盤に対するアプローチは全身的に効果を出すこともあるが、仙腸関節がすべてと思ってもいけない。

・骨盤は股関節、脊椎から影響を受け、逆に両者へ影響を与える

・骨盤帯における理想的なポジションは締まりの肢位

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最後に

骨盤を一つの物として見るのではなく、このように細かく分けて考えて、クリニカルリーズニングに組み込むとと非常にアプローチ方法が多いことに気づきます。

全身への影響も大きい部分なので、しっかりと構造を覚え、しっかりと骨盤の関節も整復出来るようになりましょう。この記事を参考にしたり、今後もう少し実戦的な内容も記事にしていきたいと思います!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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