MDT(マッケンジー法)には柔整整復術に応用出来る理論がたくさんあります。
その中の『フォースプログレッション』と『フォースオルタナティブ』について紹介していきたいと思います。
『フォースプログレッション』と『フォースオルタナティブ』は、MDTの「徒手矯正時における負荷を加える際のルール」であり、とても大切な概念です。
シンプルですがとても大切で、MDTだけでなく、柔道整復術や、整骨院におけるリハビリでも活用できる概念です。
もうすでに無意識に行っている柔道整復師の先生も多いかもしれません。
フォースプログレッション(Forceprogression)とは
フォースプログレッションは、徒手矯正やリハビリの負荷の強度に関する概念であり、以下の2つのことをいいます。
①弱い負荷から始める
②負荷は必要最小限にする
①弱い負荷から始める
弱い負荷から始めることで、負荷によって生じるリスクを最小限になります。
例えば腰を痛めた方に「腰椎の伸展」の負荷によって生じる反応を評価したいとします。
その際に、「腹臥位での腰椎伸展運動」をいきなり、やらせるのではなく、段階をふみ実施したほうが負荷によって生じるリスクが少なくてすみます。
- 腹臥位にねかせる。
- パピーポジション(腹臥位で胸を浮かせて両肘をついた姿勢)にさせる
- 最後に十分に腰椎を伸展させた状態を保持させる
※かといって腰椎をしっかり伸展できる方に腹臥位にねかせるだけで経過を見ている時間はないので問診や施術中に可能な稼働範囲は予め目星をつけれる注意力も必要になります。
②負荷は必要最小限にする
こちらもリスクを減らすためのものですが、最初に弱い負荷で始めても必要があればどんどん負荷を増やしていきます。効果があるならば負荷を上げますが、同じ効果を得られるならば最小限の負荷に留める必要があります。
意味のない負荷はかけないということですね。
例えば先ほどの例でいうと、腹臥位が可能であれば次にパピーポジションをとらせます。
ここでベースラインである腰痛がかなり軽減されているのであれば、エンドレンジまで腰椎を伸展しなくても良いという意味です。
フォースプログレッションで負荷を上げる必要があるのは、基本的にはトラフィックライトガイドで黄色信号であった場合です。
もちろん、エンドレンジまで行わなければ得られない効果がある場合には弱い負荷から行ったアプローチから最終的にオーバープレッシャーをかける事は多々あります。
フォースオルタナティブ(Forcealternative)とは
トラフィックライトガイドで黄色信号であった時、もうひとつ考慮するのが『フォースオルタナティブ』です。
フォースオルタナティブとは
②負荷のかけ方を変更
反復負荷 ↔️ 持続負荷
反復伸展 ↔️ 伸展位の保持
③負荷をかける方向を変更
伸展↔️屈曲
④負荷入力の方向の微調節
伸展→ 回旋+伸展
⑤回数の変更
10回→20回
等があります。
トラフィックライトガイドが黄色で良い負荷なのか判断がつきにくい場合、上記のように負荷を変えることによって、判断がつく場合があり、青色のDPを見つけられたら治療プランを組みやすくなります。
トラフィックライトガイドとの関係性
MDTは、患者に反復運動や姿勢保持等の負荷を加えて反応を診ながら適切な負荷か判断し治療プランを決めていきます。
弱い負荷から始め、その負荷で良い反応(トラフィックライトガイド青)であればその負荷で十分であり、それ以上負荷の強度を高める必要性はないという考えです。
マリガンは良い反応が出る方向へはオーバープレッシャーをかけるという考えなのでそれについては反応をみながら判断します。
また負荷を加えて状態が悪化した(トラフィックライトガイド赤)ならば、その負荷を強めると更なる状態悪化を引き起こすので、禁忌となります。
つまり基本的には、負荷を強めるのは、その負荷の強さでは改善もしくは悪化しないという状況、トラフィックライトガイド黄色の時となります。
フォースオルタナティブによって、負荷のかけ方に変化をつけるのは、トラフィックライトガイドが赤でも活用できます。
赤の場合でも上手く活用すると、赤じゃなくなる場合があります。
もちろん、黄色の際に活用し青にする事もあります。
青の場合は活用する必要はありません。
悪い変化が起こる場合、そのフォースオルタナティブは間違っているということになります。
MDTはフォースプログレッション・オルタナティブとトラフィックライトガイドによって安全性と効果のバランスの最適化を図っています。
おわりに
フォースプログレッション・オルタナティブを理解し技術力と安全性を高めていきましょう。
私個人的にはフォースプログレッションよりもフォースオルタナティブを重要視しています。
所謂、名人と言われる柔道整復師はフォースオルタナティブの幅が広く色んな症状に対応でき、しっかりと主訴を軽減させれるセラピストなんだと思います。
もちろん、骨折・脱臼や急性捻挫の整復固定も大切ですが、症例数を考えると、小関節の亜急性捻挫をしっかりとと診れるようにしておきましょうね(^^)
最後までありがとうございました。