ローテーターカフ、腱板損傷について

腱板損傷・損傷断裂は整骨院でもよく見かける外傷の1つです。

新米柔整師は施術で何をしたらいいのかわからない、とりあえず先輩に言われた通りワンパターンに治療している人はこの記事必見です!

ローテーターカフがそもそもどんなものなのかを理解できると、自然と結果が伴うようになってきます。

この記事を読み、ローテーターカフの基本的な構造と役割を理解し、腱板断裂・損傷後の施術をどのように組み立てればよいのか、参考にしてみてください!

スポンサーリンク
スポンサーリンク

ローテーターカフ(回旋筋腱板)の役割と特徴

ご存知だとは思いますがローテーターカフ(回旋筋腱板)は

棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の総称で、上腕骨頭を囲むように走行しています。

その下層にある関節包靭帯複合体とともに上腕骨頭を求心位に保持する働きがあります。
特徴的な役割として

①肩関節の固定力を調整する

②関節内運動をスムーズに行う

があります。

肩関節は可動性が広い関節であり、骨性の支持が少なく、靭帯や筋肉などの軟部組織によって安定性を得ています。

大きな可動域とその動きに耐えられる安定性を作り出しているのがローテーターカフです。

ローテーターカフが大切だということがこれだけでも伝わるんではないでしょうか?

肩関節の固定力を調整する

骨性の安定がない肩関節はローテーターカフによって安定性を得て、それによって正常なアライメントを保ちながら広範囲な動きを可能としています。

肩の広範囲な可動域を制限しないように、関節の回りには運動を制限するような太い靭帯がありません。

可動域が大きい分、安定性の少ない構造の肩関節の固定力を補うには伸縮性のあるローテーターカフが適しているというわけです。

例えば上腕自動内旋時、大胸筋等のアウターマッスルが収縮すると上腕骨頭は内転方向に引寄せられ関節から飛び出しそうになりますが、棘下筋・小円筋が伸張されながらも、つっぱり緊張し上腕骨頭を関節に押し付けながら関節の逸脱を防ぎ逆側への滑りを発生させ軸を保った運動を可能になるのです。

つまり、腱板による張力は上腕骨を動かすだけでなく、上腕骨頭を関節窩の中心軸上に安定させるブレーキ役の働きもあるということです。

もちろん内旋だけでなく、どの方向に動いてもこの機能が働いており、腱板の働きが不十分な場合は関節の動的アライメントに不具合が生じ負担がかかるのです。

関節内運動をスムーズに行う

三角筋や大胸筋など肩関節周りのアウターマッスルが働くと骨頭は関節窩から逸脱する方向へ動きます。

例えば外転時、三角筋だけが収縮すると骨頭は上方へ転がり滑り運動をし、上腕骨頭は肩峰にぶつかり間にある組織を痛めてしまいます。

しかし肩関節外転時に棘上筋が骨頭を関節窩に、抑え込むように圧迫し外転方向に転がりながらも下方へ滑り運動を作るように働いてくれるので実際にはぶつからないで外転ができるのです。

もちろん、この時も棘上筋だけでなくその他の腱板筋の張力が、三角筋による上方へ生じる力を調整するブレーキ役として下方へ骨頭を引いています。

ちなみに外転時にローテーターカフは以下のように同時に働きます。

・棘上筋:上腕骨頭を関節窩へ直接圧迫する・外転方向に転がり、下方へ逆滑り運動

・肩甲下筋、棘下筋、小円筋:上腕骨頭を下方へ抑えつけ、アライメントを保つ

・棘下筋、小円筋:上腕骨を外旋させ自然な外転に誘導する。

回旋筋腱板を作る筋肉

回旋筋腱板を構成する4つの筋肉をおさらいしていきます。

柔整の教科書より細かく書いていきますね。

棘上筋

起始:肩甲骨棘上窩

停止:上腕骨の大結節上部、肩関節包

作用:肩関節の外転(特に中心軸をずらさない回転運動)、外旋

特徴:肩関節外転0~90°において強い収縮する
上腕骨頭を関節窩に引きよせ肩甲上腕関節を安定させる

あと時々棘上筋が優位に使われていると骨頭が上方に引寄せられてインピンジメントを起こすと話す先生がいますがそれは間違いです。

上に引き寄せる力はそこまでないです。逆に弱ると三角筋が優位に働き上方に引寄せてしまいます。

実際に棘上筋断裂した方のXPは骨頭と肩峰の間が狭くなります。

棘下筋

起始:肩甲骨棘下窩

停止:上腕骨大結節中部、肩関節包

作用:肩関節の外旋(中心軸をずらさない回転)

上部繊維:外転、下部繊維:内転

反作用により起始である肩甲骨の上方回旋

特徴:肩関節外転時における上腕骨頭の下方滑りに作用する
投球動作のフォールスルー期において緊張してくれることで骨頭の逸脱を防ぐ(負担もかかる)

小円筋

起始:肩甲骨外側縁

停止:上腕骨大結節下部、肩関節包

作用:肩関節の外旋・内転

反作用により起始である肩甲骨の上方回旋

特徴:肩関節外転時における、上腕骨頭の下方滑りに作用する

肩甲下筋

起始:肩甲骨前面の内側縁

停止:上腕骨の小結節、小結節稜の上部

作用:肩関節の内旋、水平屈曲、内転

反作用により起始である肩甲骨の外転・外旋

特徴:回旋筋腱板唯一の内旋筋

腱板損傷をしやすくなる要因

大きな負荷をかけていなくても腱板損傷・断裂を起こしやすくなる要因を元々持っている方が少なくないです。

そうすると大きな外傷でなくても軽い負荷や亜急性による繰返しのダメージで腱挫傷や捻挫になってしまいます。

しかし上記したような腱板の働きが正常ならば断裂するリスクは大幅に減少します。

逆に負荷がかかりやすいのはどういう時か考えてみます。。。

上腕骨頭が関節窩と適切な位置関係にいられず中心軸同士が離れてしまう時にローテーターカフに大きなダメージが加わります。

つまり、運動時のアライメントがずれしてしまう運動パターンの発見し、ただしていかないという事になります。

多いのは、僧帽筋や菱形筋群などの肩甲骨を挙上させる筋肉やアナトミートレインのSBAL、SFALといったラインを優位に使ったり広背筋や小胸筋やDBALに固さがありおこる運動パターンです。

筋肉の主動筋・拮抗筋、表層筋・深層筋をそれぞれ考慮し、ローテーターカフを制御してしまう筋肉や筋膜ラインを優先的に使ってしまう癖を直していきます。

偏って使ってしまっている筋群は抑制し、働いてもらいたい筋群は促通または働きやすいアライメントに正す事で腱板損傷に繋がるストレスは受けにくくなります。

腱板損傷・断裂後の治療

まず静的アライメント、可動域、理学検査、動的アライメントを評価し共通する弱点を探すことが大切です。

静的アライメント

立位や座位で肩関節のアライメントを評価します。

肩甲骨の位置や上腕骨の位置をメインに頭部や脊椎も評価しましょう。

可動域検査

屈曲・伸展・外、内転・外、内旋・水平屈曲、伸展結髪、帯 必要に応じて可動域を測定します。

ただ可動域を見るだけではなく、制限がある際はどこに制限や痛みがあるのかを確認しましょう。

急性炎症や断裂では無理に動かしてはいけません。

理学検査

ドロップアームサイン、ペインフルアークサイン、インピンジメントニアーテスト、ホーキンステスト、エンプティカン、フルカン、アプリヘンション、リフトオフテスト等を必要に応じて組み合わせます。

必要なエクササイズやストレッチ検査も行います。

また肩関節のポジションごとの伸張性を評価し、どこに組織に制限があるか評価しましょう。

肩関節の各ポシションごとの可動域制限因子と筋力評価の記事はこちら

1stポジション

外旋:肩甲下筋上部線維、棘上筋前部線維、三角筋前部線維、大胸筋、烏口上腕靭帯、上関節上腕靭帯、前上方関節包

内旋:棘上筋後部線維、棘下筋上部線維、後上方関節包

2ndポジション

外旋:肩甲下筋下部線維大円筋、大胸筋、広背筋、前下関節上腕靭帯、前下方関節包
内旋:棘下筋下部線維、小円筋、後下関節上腕靭帯、後下方関節包

3rdポジション

外旋:大円筋、肩甲下筋下部、大胸筋、広背筋、前下関節上腕靭帯、前下関節包
内旋:棘下筋下部、小円筋 、後下関節上腕靭帯・後下方関節包

各ポジションによって伸張されやすい筋、線維が変わるのでローテーターカフの中でも固くなっている可能性のある場所を想定することができます。

動的アライメント

可動域検査中やエクササイズ中のアライメントを評価します。

よくあるのは、屈曲や外転時に肩甲骨が内旋したり上方回旋が足りなかったり、それを補おうと肩甲骨を挙上させたトリックモーションや上腕骨頭が前方に転がり関節窩から逸脱する、肩甲骨が内旋しすぎて骨頭が後方に置いていかれる等の運動パターンです。

上腕を内旋させて使う方も非常に多く、ローテーターカフはリリースよりもトレーニングが大事ですが内旋筋である肩甲下筋は肩甲骨外側縁に前からリリースをかけることもあります。

またゼロポジョン(肩甲棘の延長と上腕骨長軸が直線、肩峰-烏口突起と内側上顆-外側上顆が平行)で保てる筋力を評価しておくと良いでしょう。

ゼロポジョンは関節包やローテーターカフの張力が均一となると言われている位置です。

その位置で上腕骨頭をローテーターカフが支えてくれないと骨頭が逸脱してしまうので、ある程度の緊張が必要です。

骨頭の転位によりどの筋肉が弱っているかを想定すると

ゼロポジョンより前方に骨頭→肩甲下筋が弱化

ゼロポジョンより後方に骨頭→棘下筋が弱化

ゼロポジョンより上方に骨頭→棘上筋が弱化

それらを踏まえて整復やエクササイズを処方します。

回旋筋腱板に対するエクササイズ

急性期や炎症の強いものは整復を行いテーピングや三角筋で固定をしますが落ち着いてきたらエクササイズが大事になります。

ローテーターカフをエクササイズ

ローテーターカフは強い筋出力を持っていないので、強い負荷はいりません。

大胸筋や三角筋などアウターマッスルを触診し力が入らない程度の負荷にし、安定性を保たせるためにゆっくりトレーニングします。

基本的なアブタクション・インターナルローテーション・エクスターナルローテーションの説明は割愛しますが、ワンランク上のトレーニングをするのならば筋膜連結を応用したトレーニングがおすすめです。

まず菱形筋と連結してるので肩甲骨をやや内転・外旋させます。背筋とも間接的に繋がるので姿勢を正し軽くチンインします。

インナーが弱ってる人はすぐ顎が上がるのでここは大事です。

そしてチューブでトレーニングさせる場合は小指が連結してるのでしっかり小指で握らせます。

またアブタクションの時は連結している三頭筋も使わせるように肘を伸ばします。

筋単体だけでなくこのような機能的な連結も考え、小指から尺側、上腕後面からローテーターカフを含む肩甲帯後面の筋群の連動性も上げるという考えも必要です。

ちなみに棘上筋に刺激を入れやすいと言われているエンプティカンはフルカンと筋電図検査の違いはないという論文が出ていますので運動学習のためにもフルカンでのアブタクションをお勧めします。

それ以外にも2nd、3rdのポジションでのローテーションエクササイズは働きやすい、伸張されやすい筋肉が変わるので参考にしてエクササイズに取り入れてみてください。

肩甲骨のエクササイズ

起始側の上腕骨を動かすのではなく肩甲骨を正しい位置へ動かすエクササイズです。

忘れがちではありませんか?肩甲骨のアライメントが整えば二次的にローテーターカフも働きやすくなりますよ。

肩甲骨に対し上腕骨が動くだけではなく、上腕骨に対して肩甲骨も動いてアライメントが安定しているのです。

肩甲骨を動かして上腕骨頭に合わせるエクササイズを紹介しますね。

①.四つ這いになります

②.指は前方に向け手をつき肘関節は伸ばしておきます

③.②の状態から上腕を外旋させます。3秒3秒キープしたら戻し10回繰り返します。

ポイントとしては、

・頭軽く顎を引き頭は真っ直ぐ

・肩が前に入らないように

・肩甲骨上方回旋を意識する

・胸を軽く前に出す

おすすめの本

最後に

ローテーターカフは肩関節損傷、上肢スポーツ障害の治療では欠かせないので役割と構造を覚えておきましょう。

そして腱板損傷した結果ではなく、なぜ腱板断裂・損傷してしまったのかバックグラウンドを視野にいれアプローチしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアする

フォローする