股関節アプローチワンポイント

本日は股関節の可動域制限の考え方についてお伝えします。
股関節疾患は臨床で診る事も多いとおもいます。

FAIや主訴がなくても可動域に制限があったりOAまで進行していたりと
進行度も幅広いです。

股関節に制限があると腰や膝にも負担がかかりますし、歩行を診る際にも必ず評価しておくべき部位である大事な関節なのでしっかり診れるようにしていきましょう!

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股関節の特徴

股関節は球関節に分類されるので、屈曲↔️伸展、内転↔️外転、内旋↔️外旋と3つの軸の動きを可能にしています。

股関節が動く際は、この3つの軸の動きが複合的に合わさって動きます。

連動しやすい動きは、

屈曲と外転と外旋

伸展と内転と内旋です

股関節の屈曲・伸展は実際には1軸だけの動きというのは構造上起きにくいです。

この3Dの動きが起きるのは「前捻角」と「頚体角」の影響です。

前捻角は、大腿骨の頚部が成人では約12~15°前方に捻れているというものです。
頚体角は、大腿骨頚部と骨幹部がなす角度のことで、成人では約125~135°の角度があります。

この前捻角と頚体角があることで、股関節の3軸を伴った動きになります。

ROMやexを行う際はこの動きを意識しておこないましょう。

股関節可動域制限の代表的な原因

①.筋肉の要素

大臀筋、中臀筋の柔軟性低下

股関節屈曲運動に伴って、臀筋群は伸張されますので、十分な柔軟性が必要となります。

股関節の屈曲時、大腿骨は前方に転がり後方に滑りますが、臀筋群など後方の筋群の柔軟性がないと十分に転がることができず、後方に押さえつけられるように滑り運動で代償し関節唇の前縁でインピンジメントを起こしてしまい痛みの原因となる可能性もあります。

また、胸腰筋膜システムにより腹斜筋群や胸腰筋膜を介して対側の広背筋とも連結していますので、腰部や反対側の上肢からの影響で臀筋群が上方へ牽引され、屈曲制限を起こしているとも考えられます。

ハムストリングスの柔軟性低下

ハムストリングスは膝関節の屈曲と股関節の伸展の作用があるので、柔軟性の低下により直接的に屈曲制限因子となります。

上部では浅層にある大臀筋、隣接する外側広筋、大内転筋と癒着を起こしやすく、癒着することでハムストリングス単体の柔軟性の問題ではなく、筋同士が滑らないことによる制限が引き起こされます。

下部では大腿二頭筋と腓腹筋外側頭間、半腱・半膜様筋と腓腹筋内側頭間で癒着が起こりやすく、下腿からハムストリングスを介して屈曲制限を起こしている場合もあります。

スーパーフィシャルバックライン(SBL)で、坐骨結節を介し、脊柱起立筋とも連結してるので、体幹からの影響も考えられます。

梨状筋の柔軟性・筋力低下

梨状筋は股関節におけるインナーマッスルの一つであり、臀筋群の深層にあります。

梨状筋は仙骨の前面から大腿骨頭の真後ろを通過し大腿骨大転子上縁に付着します。

力は強くないですが、大腿骨頭を屈曲・外転・外旋方向へ正しく転がす作用があるので筋力低下が起こるとアウターマッスルで動きを作ってしまい骨頭が大きく滑りすぎて関節に負担がかかります。

それにより浅層の殿筋群が過緊張する原因にもなります。

この筋が正常に機能することで、臼蓋に対して大腿骨頭が求心位を保つことができるので、正常な関節アライメントが保たれます。

また柔軟性が低下しても直接的な伸展制限・内旋制限になりますし、大腿骨頭が外旋位に誘導されてしまうとアライメントを阻害し可動域制限やO脚になってしまう可能性があります。

ちなみに梨状筋は股関節屈曲90°以上では内旋として働くので柔軟性がないと深い屈曲位で内旋方向に誘導されインピンジメントをおこしやすくなります。

腸腰筋の筋力低下・柔軟性低下

腸腰筋は股関節においてもっとも大切といっても過言ではない重要な筋です。

にもかかわらず、普段の生活では使われにくく、廃用萎縮により弱く、硬くなりやすいです。

梨状筋と同様に関節アライメントを高めているため、腸腰筋による股関節の安定性が弱まると、臀筋群や大腿四頭筋などのアウターマッスルで安定性を得ようとするため可動域制限が起こります。

屈曲時の転がりも起こりにくくなり、滑り優位になりインピンジメントをおこしやすくなります。

さらに、腸腰筋自体も硬くなることで屈曲時にうまく短縮することができず、つまるような制限が起きたり伸展時や外転時に伸長出来ず直接的な制限になります。

大内転筋とディープフロントライン(DFL)上で連結しており、大内転筋由来の硬さから制限を起こすこともありますし、逆もまた然りです。

骨盤がIN(内旋転位)や過前傾している人は過緊張により短縮固定している方が多いです。

逆に骨盤前方転位型のスウェーバック姿勢の人は伸長固定している方が多いです。

内転筋群の柔軟性低下・筋力低下

上記しましたが内転筋群の固さは腸腰筋にも影響します。

固くなると直接的に外転時に制限が起きますし、外転の制限は連動する屈曲の動きにも制限をかけることになります。

具体的には、長内転筋・大内転筋・腸腰筋などが制限因子として挙げられます。

特に大内転筋は固くなると屈曲の制限が強いです。ハムストリングスとも癒着するので、そこも視野にいれてアプローチしてみてください。

大腿直筋の柔軟性低下

腸腰筋が筋力低下を起こすと、大腿直筋が補うように緊張します。

そうすると、股関節の安定性と股関節の動きを出すという役割の両方を担うので普段から使われる頻度が増え過緊張をおこし柔軟性を失います。
そういう状態で大腿四頭筋の筋トレを処方すると、緊張を助長してしまい、股関節はガチガチに固められてしまいます。

関節も転がりが運動か減って滑り運動が大きくなり負担がかかります。

筋トレが悪いわけではないですが、その時の身体の状態を考慮し処方することが必要です。

緊張にも、筋出力低下にも理由があって、結果としてそうなっているだけの場合が多いということを理解しましょう。

また、大腿直筋はスーパーフィシャルフロントライン(SFL)で腹直筋と連結しています。
腹直筋は円背姿勢などになると、短縮しやすいので大腿直筋は腹部方向へ引かれ、結果的に柔軟性が低下しますので合わせて確認しましょう。

外転筋群の柔軟性低下・筋力低下

具体的には、中臀筋、大臀筋、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯などが大腿骨の内転、内旋を制限します。

それぞれの癒着ポイントにアプローチしてみてください。

股関節伸展においては、股関節伸展+内転+内旋の複合運動が起こるので内転内旋制限からの影響をうけます。

筋力低下は特に中殿筋がインナーマッスルになるので重要です。

確りと確認しましょう。

②.骨・関節の要素

大腿骨のアライメント

関節窩に対しての大腿骨頭のアライメントを評価しましょう。

O脚による外転・外旋転位やX脚による内転・内旋転位や

関節臼蓋形成不全による後上方転位等がよくみかけます。

それぞれの転位を整復しながら症状の反応を見て、DPを検知出来たら周囲の軟部組織も調整します。

また、大腿骨頭の位置異常は、単純に骨頭のアライメントだけでなく、腸骨との位置関係も考えながら整復しないといけません。

腰椎、骨盤・仙腸関節のアライメント、可動性

股関節の可動域制限においては、骨盤と腰椎との連動性が必ず関わってきます。

股関節の屈曲時に骨盤・腰椎が一切動かないと100°程度しか動きません。

股関節屈曲は骨盤後傾と腰椎後弯が同時に起こるため、骨盤が前傾位置で固定されていると後傾が足りずに屈曲時にインピンジメントしやすくなります。

骨盤前傾の助長因子としては、腸腰筋・大腿直筋・大腿筋膜張筋・縫工筋・内腹斜筋などの短縮・過緊張が挙げられます。

腰椎も前彎方向に固定されていると股関節屈曲と骨盤後傾に伴った腰椎が後弯が起きないので股関節の屈曲にも制限が出ます。

腰椎の前彎助長因子としては、腸腰筋・脊柱起立筋・胸腰筋膜・多裂筋などの短縮・過緊張が挙げられます。

また股関節の伸展に制限があると腰椎や骨盤で代償し前彎・前傾が強くなります。

それが結果的に屈曲の制限にもなりうるのです。

股関節伸展も屈曲と同様に腰椎と骨盤の関係性を考える必要があります。

股関節伸展と骨盤前傾と腰椎前弯が同時に起こります。

なので、骨盤が後傾方向に固定されると股関節の伸展も制限されます。

腰椎においても後弯固定されると股関節の伸展が制限されます。

骨盤後傾助長因子としては、外腹斜筋、大臀筋、中臀筋後部線維、ハムストリングス、大内転筋などが挙げられます。

腰椎後彎助長因子としては、腹直筋、横隔膜、腰方形筋などが挙げられます。

また腹圧が弱ってる方は腰椎の前方滑りや骨盤の前方転位もよく起こりやすい転位です。

これにより大腿骨頭の位置が相対的に後方へ転位しているパターンもよく見かけます。

腸骨は矢状面、前額面だけでなく水平面のアライメントにも注意が必要です。

IN(内旋)やEX(外旋)等の転位も多いです。

腸骨のアライメントが悪くなると大腿骨頭の位置や動きがよくても結果、股関節のアライメントは悪くなり可動性がなくなります。

INを整復しDPを検知したら、腹横筋・内腹斜筋鼠径靱帯などの柔軟性も評価しましょう。

EXを整復する方向にDPを検知したら、外腹斜筋・利状筋等の柔軟性も評価しましょう。

柔軟性の低下が認められる組織を緩めたり滑走しやすくしたら、拮抗筋の出力が上がりやすくなるので収縮させましょう。反射で評価した筋肉の柔軟性が高まります。

他にも回旋転位や左右の腸骨の高さの違いなど評価するポイントは多いです。

骨盤や背骨は書ききれないので他の記事とも合わせて治療プランを組み立ててみましょう。

股関節だけでなく、骨盤・腰椎との関係を評価した上で股関節との関連を考えることが症状の早期改善につながります。

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最後に

私も股関節へのアプローチは苦手でしたが股関節の整復を確りと行えるようになると即座に可動域が改善することもあります。

そこから腸腰筋の柔軟性と筋力のバランス

腰椎-骨盤-股関節の連動性をしっかり評価し、局所の癒着や関節アライメントなど部分的なアプローチもしていきましょう。

腰椎-骨盤-股関節の連動など広い視点と、股関節単独をしっかり見る視点をいったりきたり出切る視野が必要になります。

木を見ながら森も見なくてはいけません。

股関節自体の症状はもちろんですが、膝、足部、腰部疾患においても股関節はかなり重要な部位ですので、必ず評価出来るようになりましょう。

今回の記事が参考になり評価やアプローチに役立ってくれると幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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