肩の痛み、肩甲骨と小胸筋の関係

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肩甲骨と小胸筋の関係

腱板断裂や損傷は「肩峰下インピンジメント」により起因し、肩峰下インピンジメントは「肩峰下スペースの狭小化」により誘発されます。

バージニア大学では100以上の論文によって、肩峰下スペースの狭小化は「肩甲骨と上腕骨の機能の異常」によって起こり、それらが起こるのには「5つの生体力学的因子」が関係していることを明らかにしました。そして5つの生体力学的因子は運動療法の対象になると記載しています。

その中に肩甲骨の機能に異常をきたし、肩峰下スペースの狭小化の要因とされる「小胸筋の短縮」について書いてみます。

難しくなりましたが、要は肩の痛みの原因に小胸筋の柔軟性低下は論文により認められているということです。

小胸筋は肩甲骨の運動を制限している

新しい解析方法である生体内3次元動態解析によって、正確に肩甲骨の運動が分析されるようになりました。これらの研究により、上肢の挙上角度に応じて、肩甲骨は上方回旋、後傾、外旋の3つ運動をすることが明らになりました。このような3軸の運動は、肩峰下スペースを広げるために生じるていることもわかっています。

肩甲骨は、臼蓋上腕リズムといい、上腕骨頭の動きに合わせて肩甲骨が動き関節のアライメントを一定にたもちます。

この動きを大きく制限してしまうのが小胸筋です。

小胸筋は、第3-5肋骨に起始をもち、肩甲骨の烏口突起に付着しています。

小胸筋は胸郭の前面から肩甲骨をつなぐ唯一の筋肉です。走行から、小胸筋の作用は肩甲骨の下方回旋、前傾、内旋であり、外転の作用もあります。

先程記載したように肩甲骨は上肢の挙上にあわせて上方回旋、後傾、外旋しますので小胸筋は下方回旋、前傾、内旋に作用し、肩甲骨の必要な運動を制限してしまうのです。勿論、ブレーキ役をしてくれたり、他の動作の時に必要な働きもしてくれるのですが、柔軟性低下により様々な動作で邪魔をします。

また、オハイオ大学でも、統計により小胸筋の短縮は肩甲骨の動きを妨げ、肩峰下スペースの狭小化に関与すると報告しています。

小胸筋のリリース

単純に小胸筋の走行に沿ってリリースをかける方法もありますが、大胸筋が邪魔をします。

大胸筋とも癒着を起こしやすいので、大胸筋の胸骨部から肋骨部の外側から大胸筋をめくり上げるように内側に指を入れ小胸筋を大胸筋から剥がすように横断したり、小胸筋の短縮をとるように烏口突起に向かい上下にリリースします。

固さを感じる位置があればリリースしたまま止めて緩みが起きるまで置いてみましょう。

 小胸筋の効果的なストレッチング

小胸筋のストレッチも研究により肩痛の軽減を認めています。肩甲骨の矯正に取り入れてみて下さい。

ここではただ伸ばすのではなく、柔道整復らしく治療効果を高める細かいポイントも書いておきますね(^^)

パッシブストレッチ①

①患者さんを患側を上に側臥位にします。

②術者は患側と同側の手の2~4指を面にして大胸筋の外側端から小胸筋へリリースをかけながら烏口突起に、母指はそれをなぞるように腋窩にかけ肩甲骨を後傾させます。

③逆側の手を肩甲骨内側縁にあてがい、母指は内側からリリースをかけながら下角を上方回旋方向に誘導します。②と③は同時に行います。

④両手で肩甲骨を後傾・外旋・上方回旋方向に整復します。

⑤患者さんに患側の上肢を140°程挙上してもらいます。この時に肩甲骨は上肢の動きに合わせてさらに、後傾・外旋・上方回旋方向に誘導します。

⑥術者は患側と同側の手を上腕遠位部へ持ち変え把握し、軽く長軸上方へ牽引しながら水平伸展していきます。この時に患側と逆側の手は上方回旋を維持し牽引方向へ肩甲骨をスライドさせ内転し過ぎないように止めておきます。

患者さんが小胸筋にストレッチ感覚を訴えたら、そこで止めます。

数秒間止めておくとストレッチに対し反発的に収縮させている神経に抑制がかかり、緩むので、それを感じれたら戻します。

注意点

①肩甲骨のアライメントを整えてストレッチしていきますが、人により正しい位置や整復位置は違うので、随時変化させます。

②凍結肩で挙上が不可能な方や痛みを伴ってしまう方はやらないでください。

③女性の場合乳房に手がかからないように注意します。

④持ち変える時に肩甲骨の前傾が起きて痛みが出るようならば持ち変えた側上肢の肘部で烏口突起にあてがい後傾させます。

⑤ストレッチが大胸筋や肩関節前面に効かないように注意してください。

どうでしょうか?たかがストレッチでもリリースや矯正を加えながらだと細かい技術が要ります。

肩峰下スペースを保てる動きを肩甲骨に、覚えさせながら抵抗をかける周囲の筋肉を緩めていくと、可動域がかなり広がります。

難しい場合は個別相談や実技講習で聞いてくださいね!

パッシブストレッチ②

疼痛で腕を上げられない方へのストレッチ方法です。

それでも急性期はストレッチはせずに肩甲骨の整復のみにしてください。

①患者さんを背臥位にし、ベッドの患側端に寝てもらいます。

②術者は患側と逆側の手で肩甲骨の下角を上方回旋し、同側の手で患者さんの肘部屈曲位で把握します。

③患者さんの肩関節を30°屈曲位にし、上腕を長軸方向へ軸圧をかけ、肩甲骨を後傾させます。

小胸筋にストレッチ感がでたら数秒間止めておくと、1b抑制がかかるので緩みを感じれたら解放します。

上記した注意点を守りながらやってみてくださいね!

アクティブストレッチ

患者さん自身で行うセルフストレッチです。

ある程度可動域がとれる方に処方し、行ってもらうと、より良い状態になっていきます。

①立位で伸ばしたい腕を140°屈曲・50°水平伸展の位置で壁に手をつきます。グリコのポーズのイメージです!

手のひらは目線の方へ向いてるようにしてください。壁の角やドアやタンスを使うとやり易いです。

②手をついたまま体を少しだけしゃがませ、逆の腕側へ体を捻り、少しだけ前へ出ます。

胸の外側に軽く伸びを感じたら10秒間キープし解放します。

注意点

①顎を軽く引き、腰を反りすぎたり丸めたりしないようにしてください。

②大胸筋(胸の真正面)や肩関節の前面に伸びを感じてるときはうまく小胸筋にストレッチが効いてないので、やり方を変えてみてください。

③痛みを感じるときは中止してください。

ダイナミックストレッチ(拮抗筋トレーニング)

小胸筋と拮抗作用のある僧帽筋の出力を上げるトレーニングです。

うつ伏せに寝て、頭の横に手を置き、そこから手が頭の上に来るようにベッドから浮かします。

この時にしっかり胸を開き、肩甲骨が内転しすぎないように意識させましょう。

胸筋に伸びを感じた所で止めゆっくり10回程度行いましょう。

最後に

どうでしょうか?たかがストレッチでも矯正と合わせると細かい操作が必要です。

手間がかかりますが、やはり肩甲骨をしっかり操作すると痛みを出しにくくなりますし、ただ小胸筋を緩めるだけではなく、肩甲骨がよく動き可動域も増大します。

肩甲骨のキネマティクスと小胸筋の関係もしっかり理解しておくと、肩の痛みはもちろん首のトラブルや猫背矯正・巻き肩の矯正にも効果的です。

是非、施術に取り入れてみてくださいね!

最後までありがとうございました(^^)

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