猫背やフラットバック(胸椎後湾減少)により胸椎や肋骨の可動域が減少すると下部頚椎や腰椎が動きを代償します。
本来、胸椎はモビリティジョイントで下部頚椎・腰椎はスタビリティジョイントなのですが、頭部前方転位の影響を受けやすく、胸椎は肋骨が連結している為アライメントが少しでも崩れると固定され可動域を一気に失いやすい傾向にあります。
胸椎・肋骨が固定されると全身の運動能力や呼吸機能も低下してしまいます。
首や腰の痛みの原因にもなりやすいので胸椎をしっかり評価し整復出来るきっかけになれば嬉しいです。
胸椎の特徴
①肋骨と連結する
胸椎は肋骨と連結しています。
肋骨、鎖骨、肩甲骨、胸骨と胸郭を形成し胸腔内臓器を保護していますが、そのうちのどれかの可動性が低下すると、胸椎も制限を受けてしまいます。
そうなると胸腔内臓器も動きが悪くなるでしょう。
特に肺は影響を受けやすいです。
胸椎のアライメントが狂うと肋骨の可動性も減り、肺の広がりも悪くなって呼吸も浅くなるのです。
呼吸が浅くなると他の胸腔内蔵器へのポンプ作用も弱り循環が悪くなります。
書いたように胸椎は簡単に制限を受けてしまいますが、本来は胸椎のモビリティがあることで腰椎のスタビリティが保たれています。胸椎のモビリティが低くなると、腰椎が代償して、スタビリティを保てなくなり過剰なモビリティを起こします。
これが多くの腰痛の原因の一つです。
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②自律神経系が関わっている
胸椎は自律神経との関わりが深いです。
自律神経は、循環、消化、排泄、分泌および生殖などの内蔵器の恒常性を保つための神経です。
交感神経系、副交感神経系、壁内腸神経系があり、交感神経は大部分が胸椎から節前繊維が出て、頚部にかけて交感神経幹を作り内臓へ分布します。
人は活動中は、交感神経が優位に働いていて、眠っている時は副交感神経が優位になり、リラックスして体を休めます。
しかし、胸椎のアライメント不良や可動性の低下が起こると、常に交感神経が優位で緊張した状態となったり副交感神経が優位になり、気が抜けた脱力状態になったりして、慢性痛や不定愁訴の原因になることもあります。
胸郭の可動性低下によって内臓への循環が悪くなり、働きが下がると書きましたが自律神経の影響で内臓機能が低下することもあり、胸椎は内臓に対して影響が強い部位なのです。
体調全般的に良い影響を出すためには、胸椎へのアプローチは必須となる大切な部位といえるでしょう。
胸椎の構造
上位胸椎:椎体の前後径が長く、棘突起は後方へ水平ぎみに突出していて、下位頚椎の構造に近いので屈伸の可動性に富んでいる。
中位胸椎:棘突起が下方向へ傾斜しているので動かしたい椎体の棘突起は椎体1つ分下の高さにある。
facetjoint面が水平に近くなり前額面な為屈伸の可動性が少なく、回旋の可動域が広くなる
下位頚椎:椎体は横径が広がり、棘突起は水平ぎみに突出し、腰椎の形状に近づき関節面が垂直に近づき矢状面になるため回旋の可動性が少なくなり屈伸の可動性に富んでいる。
胸椎は全体的に回旋の動きが主ですが、このような構造を理解して、関節面にあった整復をすると可動域の改善がスムーズにいきます。
頚椎・腰椎への影響
胸椎は頚椎と腰椎の間に位置しているため、両者へ大きな影響を与えます。
重複しますが、胸椎は本来は可動性が必要な部位ですが可動性に制限が起きやすいです。
その影響でして頚椎、腰椎がハイパーモビリティとなります。
例えば、胸椎は後弯し頭部前方転位になると下位頚椎が屈曲、上位頚椎が伸展位となってしまい、下位頚椎が過可動性をもち、ストレートネックからヘルニアなどに進行してしまう事があります。
他にも胸椎が後弯して重心が後方へずれると、骨盤を前方転位させバランスを取り、腰椎を過伸展させて代償したり、胸椎の回旋制限から腰椎がハイパーモビリティとなり転位して腰椎の転位や滑り症の等に移行することがあります。
元々の原因は胸椎から来る姿勢アライメントの不良の事も多々あるので、姿勢と胸椎と影響を評価しておくと良いでしょう。
上記の際に起こりやすい筋肉のバランス
短縮固定しやすい筋:大胸筋、小胸筋、後頭下筋群、広背筋、ハムストリングス
伸長固定しやすい筋:脊柱起立筋、僧帽筋、頭・頚長筋、菱形筋、腸腰筋
これらを評価し、筋のインバランスをリリースやエクササイズを組み合わせると姿勢アライメントや原因に対するアプローチがしやすくなると思います。
胸椎のアプローチワンポイント
上記したように回旋可動性が高い構造のため、屈伸よりも、回旋の動きを回復させるとスムーズです。
正しい位置に整復し、正しい回旋の動きを誘導しましょう。
サブラクセーションの起きている関節のpositionalfaultが下位にある胸椎の上位胸椎に対する前上方への滑りが足りてないのか、上位胸椎が下位胸椎に対しての後下方への滑りが足りてないのか、回旋転位も考慮しながら判断して整復方向を見極めましょう。
整復位が検知できたなら阻害してしまう筋肉をリリースで緩めて、回旋の作用を持つ多裂筋、上後鋸筋、下後鋸筋等の出力を必要に応じ上げると回旋動作もスムーズになり結果、屈伸の可動域も増えていくでしょう。
多裂筋、下後鋸筋の促通法
この筋は胸椎のインナーマッスルでもあり回旋作用もあります。強化されると周囲の過緊張してる筋肉をリラックスさせインバランスが整っていきます。
①.四つんばになります
②.四つんばの姿勢から、胸椎を伸展させます。
③.胸椎伸展位から、胸椎を回旋させながら肘を伸ばしたまま同側の上肢を天井に向けます。
注意点
①急性期は禁忌
②エクササイズ中に痛みがあるならば、胸椎の伸展度合いを調整したり腕の角度を変えてみましょう。
痛みを伴ってはいけません。(paradoxofmovementはOK)
③腰や頚で代償しないように注意してください。
痛みが強いときは筋肉への負荷はかけずに関節への整復程度から始め、筋膜リリースで状況を整えて徐々に行いましょう。
最後に
胸椎は頚・腰部はもちろん上・下肢にも影響しますし、内蔵機能にも関与します。
全身に影響していて、とても大切な部位なのでしっかり構造を覚え柔道整復術のハントリングを身に付けてください。
この記事が、臨床に役立てば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。