アナトミートレインの『ディープフロントライン』

ディープフロントライン(DFL)についてご紹介します。

DFLは体の深い部分、いわゆるインナーマッスルであり、アナトミートレインのなかでも特に大事なラインです。

DFLの連結

DFLは複雑に分かれており、大きく分けて前部・中部・後部の3つのラインに分けられます。

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後部

後脛骨筋/長趾屈筋

膝窩筋/膝関節包

後筋間中隔/大内転筋/小内転筋/前筋間中隔/長内転筋/短内転筋

骨盤隔膜筋膜/肛門挙筋/内閉鎖筋筋膜/大腰筋/腸骨筋/恥骨筋/腰方形筋

前仙骨筋膜/前縦靱帯

頸長筋/頭頂筋

中部

後脛骨筋/長趾屈筋

膝窩筋/膝関節包

大腰筋/腸骨筋/恥骨筋/腰方形筋

横隔膜後部/横隔膜脚/腱中心

心膜/縦隔/壁側胸膜

椎前筋膜/咽頭縫線/斜角筋/内側斜角筋筋膜

舌骨下筋/気管前筋膜

舌骨上筋

前部

後脛骨筋/  長趾屈筋


膝窩筋/膝関節包

大腰筋/腸骨筋/恥骨筋/腰方形筋

横隔膜後部/横隔膜脚/腱中心

横隔膜前部


胸内筋膜/胸横筋

舌骨下筋/気管前筋膜

舌骨上筋

引用

DFLの特徴

まずDFL全体としての特徴をご紹介します。

①.体の筋膜構造の「中心(コア)」を形成

②.アナトミートレインのラインの中で筋膜の密度が最も高い

③.線ではなく3Dの立体構成

④.呼吸のリズムを歩行のリズムにつなげている

⑤.体幹では自立神経節と密接に関わっており、自律神経のバランスに関与

運動機能は高くなく、どちらかというと、他の浅層ラインと骨格が効率的に運動できるよう中心を安定化させる作用が強いです。

姿勢機能としては、

・内側縦アーチを作る
・下肢の各区分を安定させる
・腰椎を前方から支える
・胸部を安定させ、呼吸のリズムを整える
・頸部と頭部を支える

等が挙げられます。

DFL後部ラインにおける特徴

①.A-Pバランス

②.DFLと下肢の安定性

A-Pバランス

SBLとSFLでも出てきましたが、DFLにおいてもA-Pバランスがあります。

SBLとSFLはお互いが前後のバランスを取っていると話しましたが、DFLは両者の中心を貫き、前後バランスの不良を整えるための重要な役割があります。

頸部では、SBLにおける脊柱起立筋、後頭下筋群・SFLにおける胸鎖乳突筋はどちらも上位頚椎の伸展に作用しており、その拮抗筋はDFLの頸長筋、頭長筋のみであるため、頸部疾患における頸部アライメントの異常には、DFLの評価が大切です。。

DFLと下肢の安定性

DFLはSBL、SFLだけでなく、LLとの関係も深いです。

DFLが短縮固定、LLが伸張固定→足部回外・内返し、膝内反
DFLが伸張固定、LLが短縮固定→足部回内・外返し、膝外反

このように、DFLとLLは下肢アライメントにおいて相互に拮抗しバランスを取っているのです。

膝のO脚・X脚を評価する上でも大事です。

DFL(前部・中部ライン)の特徴

①.体幹部上中部ラインにおける特長

②.体幹部上前部ラインにおける特長

③.内臓との関連

④.頭蓋との関連

体幹部上中部ラインにおける特長

中部ラインは横隔膜から胸膜・心膜・縦隔、斜角筋、咽頭収縮筋(食道)、舌と連結しています。

この繋りを考えると運動不足で、呼吸が浅くなると横隔膜の機能も低下し、DFLの繋がりの影響で舌の動きも悪くなることが考えられます。

舌の動きが悪くなると、誤嚥性肺炎などのリスクが生じることになります。
逆に脳卒中などで嚥下障害をもつ方は舌から横隔膜、大腰筋にも影響が生じ、呼吸機能の低下、体幹部のコントロール機能の低下などが考えられます。

このように考えると、症状から原因を予測して介入すしやすくなります。

体幹部上前部ラインにおける特長

前部ラインは横隔膜の前方から胸横筋、舌骨下筋群、内側翼突筋・咬筋・側頭筋という流れで連結しています。

上中部ラインよりも浅いラインであり、顎の動きなどに関わってきます。
先ほどの考え方でいうと、顎関節症などに関連してきますし、顎関節など筋・骨格系の要素になりますので、この辺の問題に対して、柔整師の視点でも役に立つと思います。

内臓との関連

他のラインと違う部分として、内臓の筋膜との繋がりを持っています。

内臓というと柔整師としては学校で勉強するくらいで、臨床にでるとあまり馴染みのないものかもしれませんが、筋膜の繋がりを通して考えると理解しやすくなりますし、姿勢や動作での影響にも組み入れやすいと思います。

内臓が機能不全を起こすと筋膜をつたって筋・筋膜系に影響がでる、逆に筋・筋膜系をつたって内臓の機能不全を起こしている場合もあると思ってもらえばいいかと思います。

内臓のオペをしてる方は周りの臓側膜が癒着し連結しているDFLが機能低下を起こし上記の症状を出している方が多く見られますので臨床にいかしてみてください。

内臓について書くと長くなりますので、今回は割愛させていただき今後改めて記事にしたいと思います。。

頭蓋との関連

DFLの上部では、蝶形骨と連結があります。

蝶形骨は後頭骨と蝶形後頭結合を形成しており、この結合は頭蓋仙骨リズムに関わってきます。

頭蓋仙骨リズムというと、聞いたこと無い方もいると思いますが、簡単に説明すると、頭蓋骨から椎体・仙骨までは連結していますので、その繋がりを介して頭蓋骨と仙骨が連動してわずかに動いていることを言います。

この頭蓋仙骨リズムによって脳脊髄液が円滑に循環していますので、頭蓋骨や仙骨が歪むと連動性も悪くなり、脳脊髄液の流れが滞り、あらゆるマイナートラブルに関わってきます。

もちろん、脊柱自体の可動性にも影響があるので、歩行や各種動作もトラブルを起こしやすくなります。

頭蓋仙骨に関しても後々記事にしたいと思います。

重要な連結ポイント

DFLは複雑な連結をしているため、いくつか重要な連結をピックアップしていきます。

下腿の連結

後脛骨筋/長趾屈筋→膝窩筋から筋間中隔を境に、大内転筋を通って後ろにいくライン、長内転筋を通って前にいくラインに分けられます。

筋間中隔は筋膜(結合組織)によって隔てられており、癒着しやすいポイントでもあり、複数の筋肉のそれぞれの動きが困難になったり、筋出力、可動域制限の低下にも繋がる重要な部分です。

しっかり触診して必要な方にはリリースしておきましょう。

骨盤底への連結

大内転筋→坐骨結節を介して内閉鎖筋→骨盤底筋群へと連結しています。

骨盤底筋群というと、マイナーな筋ですがここがかなり大切です。

産後や高齢者が骨盤底筋群の出力低下に陥ると、骨盤の緩みからの腰痛や失禁や尿漏れを発症します。若い方でも生理痛がひどかったりする方は骨盤底筋群が機能不全を起こしている可能性があります。

デリケートな部分で男性セラピストは、触診が難しい部分ではもあります。私もセミナーで肛門挙筋を仲間と触りあって大変な思いをしたことがあります笑っ

重要な部分でもあるので後々記事にして書きたいと思います。

体幹への連結

下肢から体幹への連結であるこの部位はDFLの中でも最重要ポイントですので、絶対に覚えておきましょう。

長内転筋/短内転筋、恥骨筋→大腰筋/腸骨筋
腸骨筋→腰方形筋

この部分が重要である理由として、「腸腰筋」が存在しているからです。

腸腰筋は腰椎から股関節にまたがって付着しており、体幹・股関節の安定性、筋出力の発揮、円滑な可動性のためにとても大切です。

また、人が動く上で体幹・股関節がしっかりとした安定性保っているからこそ、抹消の上肢、下肢の動きを発揮できます。なのでここの機能なしに末梢の能力の向上はできません。

ですので、頚部痛、腰痛、膝関節症、など色んな疾患に関わってきます。

横隔膜への連結

横隔膜は大腰筋や腰方形筋と連結し、体幹部の中心を構成するかなり重要な部分となりますので、ここだけもしっかり覚えてください。

呼吸と歩行において強い影響がありますので、呼吸障害や跛行がある方などはここもアプローチします。

この連結で考えると、呼吸⇆歩行の関連性も深いことがわかりますね。

呼吸はどんな方でも生きている限りしていますので、症状を呼吸と結びつけて考えることは大切だと思います。

胸膜・腹膜・心膜との連結

例えば、腹膜の歪みが横隔膜の機能不全に繋がったり、横隔膜の機能不全が腹膜を介して大腸・小腸の機能不全、胸膜を介して肺の機能不全をもたらしたりする場合が考えられます。

イメージしにくいかもしれませんが、内科系の疾患の合併症やオペの既往がある方はDFL上にトラブルがあるかもしれないと思ってください。

内臓も視野に入れることで、より深く広くその人を診ることができます。

おすすめの本

最後に

かなりボリュームが多くて、すぐには理解できないかもしれませんが、それだけ重要な部分なので、しっかり覚えて実際にアプローチしてみましょう。

複雑で難解な連結ではありますが、ここを理解することは人を診る上では欠かせないと個人的に思っておりますので、ぜひ何回も繰り返して読んでいただいて実際に治療に生かしてくださいね。

様々な疾患、症状に応用が効くようになりますよ。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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