今日は、正しい運動に誘導させ、間違った運動パターンから起こる亜急性捻挫や姿勢の悪さから起こる痛みを根本的にアプローチし柔道整復術に応用出来る「運動連鎖」について書いていきます。
昔はこんな話をしても理解してもらえなかったモノですが、最近はとても勉強家な先生も増えてきています。
実践するのは少し難しいですが、覚えると関節にストレスがかかりにくくなり整復位を維持しやすくなります。
マッサージなんか要らない体を作れる?!
是非この記事も読み柔道整復師のレベルが上がり日本にとってどれ程必要な資格か皆さんに知ってもらえたら嬉しいです。
もくじ
運動連鎖を治療に取り入れよう
痛みをとる治療やリハビリをする時に運動連鎖を取り入れ応用できるていると、身体を「患部」のみではなく「全体」として評価し治療出来るようになる大切な考え方で、治療の引き出しはぐっと増えます。
まず下半身と上半身が連動する法則を書いていきますね。
下行性運動連鎖
下行性運動連鎖とは上半身の姿勢により、下肢に、誘導され起こりやすくなる連鎖運動のことです。
(もちろん必ず起こるものではない)
分かりやすく言うと腰を丸めるとこういう歩き方になりやすいよ。といったイメージでしょうか。
下に骨盤を前傾↔️後傾、前方↔️後方回旋させた際に起こる運動連鎖を書いていきます。
骨盤前・後傾によって起こる下行性運動連鎖
①骨盤 | ②股関節 | ③膝関節 | ④足関節(距骨下関節も含む) |
骨盤の前傾 | 屈曲・内転・内旋 | 伸展・外転(X脚)・外旋 | 底屈・回内 |
骨盤の後傾 | 伸展・外転・外旋 | 屈曲・内転(O脚)・内旋 | 背屈・回外 |
骨盤前傾は下肢の骨(大腿骨・脛骨・足部)は全て内旋方向へ誘導されると考えると覚えやすいです。
筋膜連結で考えるとディープフロントラインが固くラテラルラインが弱い事も合わせて考えてみると面白いです。
骨盤後傾は下肢の骨(大腿骨・脛骨・足部)は全て外旋方向へ誘導されると考えると覚えやすいです。
筋膜連結で考えるとLLが固くDFLが弱いことも考えてみると面白いです。
下肢は全体で回旋されつつも、下腿は地面に固定されているので大腿骨が下腿よりも大きく動き、結果的に膝は、
骨盤前傾で膝関節(下腿)の外旋となり
骨盤後傾で膝関節(下腿)の内旋となります。
また骨盤前傾が強い立位姿勢では連鎖により膝関節外旋・外反・伸展のストレスが加わりやすく
それにより、鷲足や側副靭帯など膝関節内側組織や前十字への亜急性伸張ストレスが加わり、捻挫や炎症性の疾患を起こす事があります。
骨盤後傾が強い立位姿勢では、連鎖により膝関節内旋・内反・屈曲のストレスが加わりやすくなり、膝関節内側半月板や軟骨への圧迫ストレスが加わり、捻挫や膝OAを起こすかもしれません。
また、これを読むと逆方向へ整復したくなるところですが、この運動連鎖が足りてない場合もあるし上記したストレスが加わりすぎると靭帯が伸長し運動連鎖そのものが破綻してしまったりします。
例えば骨盤前傾で下腿は外旋するはずなのにACLが伸びているとスクリューホームムーブが起きず、内旋位で留まってしまっていて整復位は外旋だったりもします。
これが実はかなり重要で、やはり机上の空論にならないよう、ベースの知識を知りながらもその人にあったハンドリングを見つけることが名人になるコツだと思います。
あと腰部には以下の運動連鎖も起こります。
- 骨盤の前傾では、腰椎の前彎が増大します。
- 骨盤の後傾では、腰椎の後彎が増大します。
骨盤後方・前方回旋によって起こる下行性運動連鎖
①骨盤 | ②股関節 | ③膝関節 | ④足関節(距骨下関節も含む) |
骨盤後方回旋 | 屈曲・内転・内旋 | 伸展・内転(O脚)・内旋 | 底屈・回外 |
骨盤前方回旋 | 伸展・外転・外旋 | 屈曲・外転(X脚)・外旋 | 背屈・回内 |
ここでいう回旋とは水平面上で起こる左右の回旋です。前傾↔️後傾とごっちゃにならないように注意してください。
例えば左骨盤が後方回旋(左回旋)しているとすると、右骨盤は前方回旋(左回旋)しているということになります。
このアライメントの患者に起こる運動連鎖は、股関節が(相対的に)屈曲・内転・内旋し膝関節には伸展・内転(O脚)・内旋が起こり左足関節は底屈・回外となります。
分かりにくいかもしれませんが、後方回旋した左骨盤の後方回旋によって、左下肢の骨は全て外旋方向へ引っ張られるます。
しかし動きやすい骨盤から見た大腿骨、大腿骨に対しての下腿の位置を書いてあるのでごっちゃにならないようにしてください。
反対の右骨盤に前方回旋が起こっているので、右下肢には運動連鎖が起き、骨盤が後傾し右股関節が相対的に伸展・外転・外旋し見切り膝関節が屈曲・外転(X脚)・外旋し右足関節が背屈・回内します。
分かりにくいですが、右骨盤の前方回旋によって、左下肢の骨は全て内旋方向へ引っ張られます。
骨盤が先に回旋してるので内旋した大腿も位置関係としては相対的に外旋となります。
下腿は固定されているので膝には回旋力が加わるので、痛める原因にもなります。
上行性運動連鎖
上行性運動連鎖は、足部の動きにより体幹が誘導される連鎖運動のことです。
①足関節(ST関節含む) | ②膝関節 | ③股関節 | ④骨盤 |
回内 | 屈曲・外転(外反)・内旋 | 屈曲・内転・内旋 | 前傾・前方回旋 |
回外 | 伸展・内転(内反)・外旋 | 伸展・外転・外旋 | 後傾・後方回旋 |
足部が回内すると脛骨が内旋され、膝関節外反され股関節内転・内旋します。下肢は内旋方向へ誘導されるわけです。
反対に足部が回外すると脛骨が外旋し
膝関節内反され股関節外転・外旋となります。下肢は外旋方向へ誘導されます。
インソールやテーピングを使い足部からの連鎖を作る
足部からの運動連鎖は整復や運動学習にも使いますがインソールを使って歩行パターンを変え理想的な運動連鎖を作るという使い方もできます。
例えば外側アーチにインソールを入れて回内にすることにより膝関節屈曲・外反・内旋し股関節屈曲・内転・内旋し骨盤前傾・前方回旋へと誘導出来ます。
内側アーチを足底に入れて回外させると逆の連鎖が起こります。
例えば、ニーインしている患者が歩行中にMCLに痛みが出てきた場合、内側アーチにインソールを入れることでニーインが減少する可能性があります。
その他の運動連鎖
下肢の運動連鎖を記載しましたが、こ下肢の運動連鎖は骨盤帯よりも頭側へ影響することもあります。
逆に、猫背やFHPなど上部の影響が上肢へ悪い運動連鎖を起こす事もあります。
①腸腰筋により骨盤が前傾する際に多裂筋が連動し腰椎が前弯する対側性の運動連鎖
➡️正常だと胸椎の後弯減少が起こるが過剰になると生理的後弯を失い、連鎖が起こらないと後弯の増大が起こる
この逆に腸腰筋が弛み骨盤が後弯する際に多裂筋も弛み腰椎が後弯する対側性の運動連鎖
➡️酷くなると胸椎も後弯、増大しバランスをとるようになると胸椎だけ後弯減少する。
②上部胸椎の後弯増強が起こると頭部の前方転位、肩甲帯前方突出、肩関節の内旋等の連鎖が起こります。
骨盤も後傾・前方転位が連鎖します。
そうすると股関節の伸展といった風に波及します。
こういった方の骨盤を前傾させるとそれだけで全ての部位にポジョションの適正化が起こる場合がありますが、これも運動連鎖によるものなのです。
こういう方には、骨盤前傾位で運動をさせるだけでコアトレーニングになる効果がでます。
運動連鎖の注意
運動連鎖は非常に大切な概念です。
患部に囚われるのではなく全体の動きを評価出来るようになり、離れた部位が患部の整復手段となることも多々あります。
骨盤の前・後傾や回旋にで起こる脊柱の運動連鎖も理解しておくと脊柱のアライメント整復にも役立ちます。
運動連鎖が起きない・過剰に起きている、間違った運動連鎖を記憶してしまっている等どの様に破綻しているかも考えなければいけない。
それに運動連鎖には、全ての人にパターンが当てはまるとは限らないしその人が持っている姿勢をニュートラルにそこから運動連鎖が起こることも頭に入れなければいけません。
まぁ何にでも言えることですね。
更に、強い負荷や加齢、外傷の後遺症などにより、骨の構造や靭帯の弛等があると運動連鎖が破綻して通常の運動連鎖に誘導できないことも多い。
例えば下肢が外旋していて、足関節回外でもそのまま設置すると反動で回内しようとするストレスがかかる。
ながね繰り返されると三角靭帯が伸びてしまい下肢が外旋していても回内足となってしまいます。
こういう方に下肢が外旋しているからと外側だけアーチをあげる手技やテーピングを行うと過剰に回内し内側の軟部組織を損傷するかもしれない。
高齢者になるとそういった破綻した運動をしているので、一般的な運動連鎖を当てはめてもダメな事も多く、微調整やその人の持っているイレギュラーを取り除きながら連鎖することが必要です。
1ヶ所を調整することで、全てが上手い具合に調整されていくという考えは魅力的ですが、そんなに甘くはなく、体によって限界があることも理解しておきましょう。
逆に、運動連鎖の観点では破綻したまま全然よくないのに患部に適切な整復やエクササイズを行っていると症状が改善する事も多々あることは皆さんも経験があるでしょう。
なので運動連鎖の概念は柔道整復術にとって大切な情報になるけども、あくまで一つの引き出しという事も忘れずに。
またこれらの運動連鎖は膝や下腿などの中間地点や脊椎などスタートは決まっていないです。上行性にも下行性にも上下両方にも起こり得ます。
卵が先か鶏が先か笑っ
連鎖のスタートから遠ざかるほど、他関節の機能の影響により連鎖パターンの多様化が生じる事も頭に入れておきましょう。
運動連鎖を取り入れた治療は矯正だけでなく正しい運動パターンにさせることが大切なので誘導しやすい声掛けも工夫することが大切です。
個々の患者へ伝わりやすい説明の
引き出しも増やしておきましょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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