今日は足関節の可動域制限ついての考え方を書いていきます。
足部は細かい筋肉や骨が多く、痛みや可動域制限に骨を折ることも多いと思います。(柔整師だけに笑っ)
そんな悩みをもつ柔道整復師に少しでも参考になれば嬉しいです。
もくじ
足関節の可動域制限
整骨院でもよくみる足関節の痛み。
その中の距腿関節の制限について書いていきます。
足関節の捻挫後に底屈時の痛みが残って正座ができなくなったり、固定期間による免荷期間があると歩行によって背屈方向へ動くことがなくなり、腫脹や浮腫によって可動域が狭い状態が続くため、底屈位で固まってしまったり。
特に背屈制限が起こると、歩行時に下肢を後方に引かずにあるくようになり膝関節の過伸展で代償したり前足部で過剰に代償したりします。
足部は体を支える土台となる場所なので、足部の状態が悪くなると全身に影響が出ます。
なので足部は全身と関係が深く大切な部位なので、正しいアライメントと十分な可動域を獲得することが必要になってきます。
足関節可動域制限の原因
筋肉からの影響
屈筋群の柔軟性低下・筋出力の低下
下腿三頭筋
下腿三頭筋は底屈作用のある筋肉なので柔軟性が低下すると直接的に背屈の制限になります。
また底屈時には距骨が転がりながら背屈時には距骨が後方へ滑るため、距骨の後方組織に十分な柔軟性がないと、距骨が後方へ滑ることができません。
下腿三頭筋は踵骨に付着しており、足底腱膜と連結していますので、ここの柔軟性が低下すると、突っぱって踵骨を前方に押し出してしまい、踵骨越しに距骨が前方へ偏位しますので、結果的に背屈制限が起こります。
さらに、踵骨への移行部はアキレス腱となっていますが、アキレス腱の下には長母指屈筋や後脛骨筋、脂肪体等があり、それらとアキレス腱間で癒着が起こりやすいポイントとなっています。
長母趾屈筋
長母趾屈筋も距骨の後方を走行していますので、固くなると直接的に距骨を前方に変位させうる筋肉です。
また、母指は指の筋肉の中では出力が強く負荷がかかりやすい筋肉です。
短縮固定したり偏平足によって伸長位で過緊張しやすいです。
伸長固定すると偏平足は助長され回内しやすくなり底屈時の正しい関節運動が破綻します。
後脛骨筋
後脛骨筋は足関節のインナーマッスルです。膝関節部の下腿の外側転位や足関節部の回内足を予防してくれる作用があります。
また腓骨筋と連結して足関節を外と内から挟み、互いに引き合いながら足部の安定性を作っています。(クロスサポートメカニズム)
足部が安定することで周囲のアウターマッスルにより十分な動きを出すことが可能となりますが、ここが硬過ぎたり、出力不全に陥るとアウターマッスルは足部の安定性を求め、運動性が落ちたり過緊張するように働きます。
伸筋群の柔軟性低下・筋出力の低下
長趾伸筋
足関節背屈に関与しますが、捻挫などで損傷を受けたり内出血により周囲と癒着を起こすと筋出力が低下し底屈筋群が優位に働き、背屈に対して制限になりやすくなります。(相反神経抑制)
伸筋群が伸張位で固定されると神経の1B線維に抑制がかかり、ますます出力が低下します。
伸長位で固定してると滑走しなくなり隣接している前脛骨筋、長腓骨筋と癒着が起こりやすくなります。
この部位に伸長位固定が起こると、背屈時にうまく弛緩できずにつまるような固さが生じたり、足指を屈曲する際の制限の原因になったりします。
捻挫後は底屈時に癒着部分の固さが損傷部に牽引力を加えて、底屈時に突っ張るような痛みが生じます。
前脛骨筋
長趾伸筋と同じような機序で癒着を起こしたり筋力低下がおきやすいです。
また、伸筋群は骨盤が前方転位しているような姿勢の方は足関節が軽度背屈位で短縮固定していることも多く、その場合は直接的に筋の短縮が底屈の制限となることがあります。
長母趾伸筋
長趾伸筋と同じような機序で癒着を起こしたり筋力低下がおきやすいです。
この筋肉が癒着し動かなくなると、拇趾が地面を蹴れなくなり正しい歩行が出来なくなります。
腓骨筋の柔軟性低下、筋出力低下
外果の後方を走行する腓骨筋は背屈時に伸張されるため柔軟性が低下すると制限に繋がります。
さらに、背屈時は回内方向へも動きが伴うので腓骨筋による回内への動きも必要です。なのでバランス良くスムーズな滑走性と筋出力の両立が必要です。
腓骨筋は長・短・第三の3つや長母趾屈筋と重なるように走行しており、この部位や伸筋支帯と癒着を起こしやすいです。
ここでの癒着が、腓骨筋による収縮における回内方向への滑走、背屈時の伸長に制限となってしまいます。
腓骨筋腱炎の時もここへのアプローチを忘れずに。
足根管(屈筋支帯)
足根管は足根骨と屈筋支帯によって作られるトンネルです。
長母趾屈筋、長趾屈筋、後脛骨筋は足根菅を通り、前足部へと走行しています。
足根菅と屈筋腱との間で癒着を起こし、固さが生じると背屈に伴う回内に制限が起こり正しい関節運動パターンが破綻しますし、背屈で屈筋支帯は緊張しますが、癒着により過緊張が起こるとそこからの制限も考えられます。
伸筋支帯
上記した伸筋群は上・下伸筋支帯の下を走行しており、この部位でも癒着が生じやすいので評価しておくべき部位です。
癒着したまま運動を行うと伸筋支帯炎といって伸筋と支帯が摩擦で炎症を起こしたり、亜急性の挫傷を起こしたりすることがある部位です。
骨からの影響
距骨のアライメント
筋肉の欄にも書きましたが、距骨後方の軟部組織の柔軟性が低下すると、踵骨・距骨は前方へ押し出されるように転位してしまいます。
捻挫後の前距腓靭帯の緩みでも前方に転位します。
前方転位によって、背屈時に遠位脛腓関節が開排し、そこに距骨がはまるように後方へ滑るはずの動きがされ、制限となります。
よくモビリゼーションで緩みが大事と前方にガンガン動かしている先生を見かけることがありますが、関節は緩みが良くないこともあるので、後方へ押し込んだり、正しい軸を保たせ動かすことが大事です。
腓骨の下端部のアライメント・立方骨のアライメント
背屈時には遠位脛腓関節は開排し、腓骨は挙上・外旋します。
しかし、臨床上多く認められるのが、下腿外旋・距骨下関節回内により、距骨は外側転位、外側荷重となり、腓骨は下方へ変位します。
腓骨が下方変位すると、その直下にある立方骨も下方に変位し、腓骨・立方骨は下方変位した状態で周囲の組織と癒着を起こして固まってしまいます。
立方骨は足部アーチ構造に影響を与える重要な部位なので評価することを忘れないようにしましょう。
また、足関節捻挫を起こすとATFによって腓骨下端が牽引され前方に転位したままになっている、もしくはATFが伸長したことにより腓骨下端が後方へ転位している事が底屈・背屈の痛みの残存の原因になっていることがかなり多いです。
捻挫後にリリースやROMで痛みが取りきれないときは腓骨下端を整復したままMWMを行ってみることを強くおすすめします。
整復した際に、DP(状態を改善させる負荷方向)を見極めたらリリースの方向も特定しアプローチしていきましょう。
踵骨のアライメント
踵骨は、足根骨のなかでも土台となるパーツで、踵骨のアライメントによって他の足根骨や中足部のアライメントも決まってきます。踵骨がどの方向に制限されているか必ず評価しておくべきです。
臨床でよくみる踵骨の回内偏位、足根菅が伸長し緊張して、その直下を走行する屈筋腱も伸長してしまい出力の低下原因になったりします。また伸長された屈筋腱と足根管が摩擦し炎症をと起こすこともあります。
回外偏位の場合は屈筋支帯が短縮し固くなったり屈筋と癒着したりします。
それと荷重やアキレス腱部の癒着によって踵骨の後方が上がり前屈したアライメントで固くなると背屈の制限になるので評価してみてください。
最後に
踵骨後方の軟部組織・距骨前方の軟部組織の筋力低下や柔軟性低下のバランス。踵骨、距骨、立方骨、腓骨のアライメント。これらをしっかり評価してみると、足部がどう制限されているか、原因はどこか?に目星がつきます。
足部は細かいパーツ同士が連動しあっているので、評価するのが難しいですが適切にアプローチすると下肢や上半身までも、良い影響があるので、ぜひこの記事を生かしてみてください!
最後までお読みいただきありがとうございました。