肘の治療におけるワンポイントアドバイス

肘関節の強い制限は、そこまで多くは見ないかもしれません。

しかし肘関節に制限があると整容、清拭、食事などの場面で困ってしまいます。

また、大きな障害でなくても肘がピキッとひっかかるような痛みや外側上果炎のような軽い物はよく見かけますね。

肘の治療ポイントも抑えればそういったものから、捻挫や骨折あとのリハビリにも1つ上の治療を行えるようになります。

肘はしっかり治せないと、肩関節の障害が出やすいですし、肩関節の痛みの原因が実は肘関節の場合もあります。軽視されがちですがアプローチ出来るようにしておきましょう。

肘関節の解剖学、運動学から可動域制限改善のポイントを書いておきますので、明日から臨床に生かして下さいね!

間違いやすい肘の可動域制限の考え方

まず、なぜ関節可動域制限や痛みが出ているのかということを考えなければいけません。
柔整師に多い間違いが、筋肉など軟部組織が固くて制限、筋が損傷したから制限という考え。
もちろんこれらもありますが1番多いのは逆で、間違えた運動パターンで関節に偏った負荷がかかり、アライメントが崩れ、軟部組織に伸長や短縮が起こったり、骨に負荷が加わったり、結果、変形が起こったりして症状が出ます。
大きな外傷は別ですが、亜急性の場合は上記の考え方を持ってください。
またこの記事を読めば大きな外傷あとのリハビリにも応用出来ます。
例えば、肘が屈曲方向に制限があるとし、上腕三頭筋が硬いから屈曲出来にくいと考えて、マッサージやストレッチで可動域が改善してもすぐに元に戻ることがあります。
一度はこういった経験あるんじゃないでしょうか?
筋肉が固いから可動域制限という考えで筋肉の固さをほぐせば良くなるという考えじゃなく、筋肉が固くなる原因があり、その結果で制限が出るので、その原因にもアプローチ出来ると効果が高まり持続性が増します。
例えば、肘の関節アライメントが崩れていることによって三頭筋が癒着を起こしていたり、肩関節の伸展に制限があり上腕三頭筋を優位に使っているかもしれません。
こう考えると、三頭筋の前にアライメントや肩の問題をクリアしないと肘の屈曲制限も良くなりにくいことがわかりますね?
それに、捻挫の弛みに対して、筋肉を硬めて安定性を保とうととしていたら、ストレッチをかけると肘関節はかえって、instability(不安定性)が強くなり痛みが強くなる可能性もあるでしょう。
なので単純にストレッチという考え方では中々改善していかないのです。
つまり、可動域制限や痛みを改善するためにはそこに至ってしまった原因や運動パターンの改善を考える必要があり、すぐに固い筋肉をストレッチするという考えは良くないのです。
そのためには、関節の構造を理解した柔道整復術、関節の構造にあった運動学が大切です。

肘関節に可動域制限があるとどうなる?

肘に可動域制限があるとどうなるか考えてみましょう。
肘関節(腕尺j)は螺旋関節で屈曲・伸展といった1軸の動きです。
可動性の大きい関節ではないですが人間は腕を使って作業するので肘が痛んだりROM制限があるととても困ります。

実際に肘を動かさず、肩と手関節で物を取ろうとするととても難しいです。

普段注目することが少ない肘関節かもしれませんが、重要な役割を担っていることがよくわかります。

肘の構造的特徴

肘関節は3つの骨で3つの関節が作られる複関節です。

肘を構成する骨
・上腕骨
・尺骨
・橈骨

肘を構成する関節
・腕尺関節
・腕橈関節
・近位橈尺関節

腕尺jの屈曲・伸展と、橈尺jによって前腕の回内・回外といった二軸の動きが行えます。

肘関節は元々約10°~20°の生理的外反があり、上腕骨に対して前腕が撓側に位置します。
これを、「肘角(運搬角)」といいます。

これより角度が大きいものを外反肘、少ないものを内反肘といいます。

肘関節の屈曲↔️伸展は上腕骨の滑車と小頭を結んだ線に対して垂直に動きますが、外側にかけて外上方に向かっているため、合わさるように前腕は外反した位置にあります。

なので肘関節は真っ直ぐ屈伸するのではなく、運搬角を考慮し、屈曲の際は前腕が上腕骨の内側に向かって、伸展の際は上腕骨の外側に向かって動かさないといけません。
もしこれを読んでいる先生が、真っ直ぐ動かしているのならば、関節から逸脱した動きになっているため、どこかに過剰にストレスをかけていることになります。

どの関節においても関節の適合性、構造から逸脱した動きをさせない整復ハンドリングは関節から来る痛みを取り除くためにとても大切です。
関節の構造を理解し、どうやって動かすか、どのような位置に転位しやすいかを考えることが非常に大切です。

肘の関節運動学

肘関節は腕尺関節と腕橈関節と近位橈尺関節の3つがあります。

①腕尺関節

腕尺関節は上腕骨滑車が凸で尺骨の滑車切痕が凹の関節構成です。
屈曲時は尺骨滑車切痕が上腕滑車の上を前上方へ転がり・滑りの複合運動がおこり、最大屈曲時に尺骨の鉤状突起が上腕骨の鉤突窩にはまります。
伸展時は滑車切痕が滑車の上を後上方へ転がり・滑りの複合運動がおこり、肘頭の先端部分が上腕骨の肘頭窩にはまります。
前腕骨が上腕に対して内転や外転転位を起こしていると肘頭や鉤状突起がはまりこめずに制限や痛みに繋がってる人も多いのでアライメントを整復しながらROMをおこなうと一気に可動域が広がる方も多くマリガンもエビデンスを得ています。
肘(腕尺j)のように凹面が動く関節は凹凸の法則に当てはめると、転がりと滑りは同方向へ動きます。
それらが過剰に起きているのか、足りてないのかを見極めながら調整しましょう。
また屈伸の可動域をスムーズにするには、皮膚、結合組織、筋膜、筋肉、靭帯、関節包それぞれ軟部組織が適度に弛緩し伸長できる状態でなければいけません。
屈曲時に伸張する組織
・肘後方の皮膚

・肘後方の伸筋群、筋膜

・内側側副靭帯の後部線維

・後方関節包

屈曲時に弛緩する組織

・肘前方の皮膚

・肘前方の屈筋群、筋膜

・前方関節包

伸展時に伸長、弛緩する組織は
屈曲時と反対です、内側側副靭帯は前部繊維がより伸長します。

これら組織で、どこに制限があるのか、どこが原因でアライメントがずれているのかをendfeelとリリースしながら関節運動し反応を見ながら組織を特定します。
リリースの深さで狙う組織は変わります。
皮膚→結合組織→筋膜→筋肉→靭帯→関節包の順に並んでいるの深さを変えていきましょう。

②腕橈関節

上腕骨小頭は球状で凸、橈骨頭窩は凹の関節構成です。
こちらも屈曲時、小頭の上を橈骨頭窩が前上方へ転がりと滑りの複合運動が起こっています。
伸展時は後上方へ転がり・滑りの複合運動が起こりますが、完全伸展位で脱力している時は関節面は離開していて、屈曲時に筋収縮によって橈骨頭窩が小頭へ引きつけられ関節が安定します。
関節機能としては腕尺jの動きを邪魔しない可動性と安定性を生み出す働きがあり、肘外反時は腕橈関節が骨性の制動力とショックアブソーバーの役割をします。
小児が野球などでここに負荷をかけすぎると離断性骨軟骨炎となる場合があります。
屈伸時に弛緩・伸長する組織は腕尺関節と同じものの撓側のものと外側側副靭帯てす。

③近位橈尺関節

橈骨頭の内側面と尺骨の橈骨切痕で近位撓骨尺関節は構成されています。
輪状靭帯が撓骨頭をくるむように覆っていて、さらに繊維骨性輪によって橈骨切痕から撓骨頭が外れないような安定した構造になっています。
本来は安定性が強く、回内↔️回外の1軸性の動きしかしない可動性の少ない関節です。
しかし撓骨は強い負荷がかかりやすい場所で、靭帯の弛緩等によりスタビリティが弱りモビリティが強くなりアライメントが崩れると、軸が崩れるので回内↔️回外がスムーズに行えなくなったり、屈伸時の邪魔をしてしまうことがあります。
本来は撓骨がメインで尺骨の橈骨切痕上を橈骨頭が前方へ転がりながら、後方へ滑る運動が起こり回内外がおこなわれています。
橈骨を固定して、回内↔️回外をしてみてると、わかりますがかなり制限がかかります。
そして前腕の回内↔️回外に制限が起こると、無意識に肩関節の内↔️外旋でカバーしてしまい、肩関節に必要以上の負荷がかかります。
撓尺関節により、上腕と別に回内↔️回外が行えるのです。
なので近位撓尺関節はとても大切ですし、場所が近いのでここに起こる炎症を、何でも外側上果炎と考えてしまう柔道整復師も多いと思います。
こちらの軟部組織についても書いてみるのでそれらを踏まえながらアライメントを調整してみてください。
回内時に伸張する組織

・肘関節撓側の皮膚組織、結合組織

・上腕二頭筋、回外筋

・遠位橈尺関節の背側関節包靭帯、外側側副靭帯、背側前腕骨間膜

・関節包の撓側部

回内時に弛緩する組織

・肘関節尺側の皮膚組織、結合組織

・円回内筋、方形回内筋

・遠位橈尺関節の掌側関節包靭帯、掌側前腕骨間膜

・関節包の尺側部

回外時も回内の逆になりますので考慮しながらアプローチしてみましょう。

肘関節ROMのポイント

上記した動きを実際にどうやってROMに落としこむか、書いておきます。

屈曲時

おさらいですが、肘関節屈曲は、尺骨滑車切痕と橈骨頭窩が前上方へ転がり・滑り運動を起こします。
屈曲する際に上腕骨が前方に代償しないように固定し、必要に応じて前腕両骨の外・内転や撓骨頭部の前方転位等が起こりやすいのでアライメントを、整えます。
屈曲は転がりと滑りのバランスを整えながら行い、さらに、肘角を考えると前腕を適切な外転位へ誘導します。

伸展時

肘関節伸展は、尺骨滑車切痕と橈骨頭窩が後上方へ転がり・滑りを行います。
上腕骨遠位が後方へ代償しないように固定して、相対的に前腕を後上方へ転がりと滑りを起こしやすくします。
屈曲と同じようにアライメントを必要に応じて整え、肘角を誘導しながら伸展します。

回内・回外時

前腕回内は、尺骨橈骨切痕に対して橈骨頭が前方へ転がり、後方へ滑ります。
これも上腕骨が内旋を代償しないように固定して、結果的に橈骨頭は回内しやすくなります。
回外時も逆に考えます。
撓骨頭のアライメントを整えながら回内、回外します。
二頭筋が近くに付着していることもあり前方へ転位していることも多いです。

おわりに

どうでしょうか?

肘の事も細かく考えていくと、筋膜連結や経絡の繋がりも理解できるようになり上肢の運動においてもアプローチすることになってきます。

明日からは肘はもちろん肩の治療にも肘の事を考慮し、アプローチしてみましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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