胸郭・肋骨の動きを柔整師の治療に活かす

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胸郭・肋骨の動きを柔整師の治療に活かす

腰や首の痛みや、体質を変える治療をしていくには必ず胸郭へのアプローチが必要になります。

そのときに胸郭の特性を理解しておかないと、どのように評価・治療プランを組んでいくかわからなくなってしまいます。
また高齢者やメインが呼吸器でなくても呼吸器疾患を合併している方はとても多いです。
呼吸は皆に必要なもので、呼吸を診ることにより得られる情報も多いのでポイントを掲載しておきます。

呼吸の意味

当たり前ですが、人は呼吸が止まると死んでしまいます。
呼吸により酸素を体の中に取り入れ循環により細胞へ届けます。

呼吸のメカニズム

呼吸は呼吸筋の収縮と胸郭の動きで起こります。
呼気と吸気により酸素を気道から肺へ運び二酸化炭素を体外へ出します。

吸気

脳幹(延髄・橋)にある呼吸中枢から命令により能動的に横隔膜と肋間筋が収縮し胸腔を広げて空気を取り込みます。

呼気

肺の弾性収縮力と横隔膜・肋間筋の弛緩により受動的に起こり、安静時は力を使わずに行われるのが正常です。
この吸気と呼気のどちらに障害があるか、あるいはどちらにもあるのか。
これを評価しておくと、胸郭の動きに対してアプローチしやすくなります。
胸郭の障害に対しても何をしていくのかを考えられると肋間神経の痛みや背部痛、胸肋・肋椎関節の痛みは勿論、腰痛や首の痛みなどの脊椎疾患に対しても効果を発揮します。
肋骨が硬いです、呼吸が浅いです。と呼吸介助するだけでは、間違いではないかもしれませんが、横隔膜や肋間筋自体が機能不全を起こしているのか、胸郭の硬さがどこからきているのか。
ここまで捉えられると、より効果を出せる治療家になると言えるのではないでしょうか。

吸気時に働く筋肉

吸気に働く筋肉を記載します。
安静時と努力吸気時に分けられます。
安静吸気時
横隔膜(7割)+外肋間筋(3割)
努力吸気時
胸鎖乳突筋、肋骨挙筋、脊柱起立筋、肩甲挙筋、僧帽筋、菱形筋、大・小胸筋、前鋸筋 等
呼吸がスムーズに行えてない方は、上記の努力吸気時に働く筋が機能不全を起こしているか過緊張していることが多いです。
これらの筋の出力が弱いと姿勢保持がしにくく、過緊張を起こしていると肩関節や腰背部痛を引き起こす原因となることもあります。
また、努力吸気時の筋群が過緊張ならば、マッサージなどで緩めればいいと安易に考えずに過緊張となった原因も考えてみましょう。
例えば胸郭に捻れが起き肋骨が動きにくくなっていたり、横隔膜が働いていないとその他の部分を努力吸気でフォローしないと呼気が足りなくなってしまいます。
こんな風に一歩深く考えてみるとアプローチの仕方も変わってきますよね?

呼気時に働く筋肉

呼気に働く筋肉を記載します。
安静呼気時
吸気を緩めると、肺の弾性収縮により勝手に呼気が起こります。
努力呼気時
内肋間筋、腰方形筋、下後鋸筋、腹直筋、腹斜筋群 等
基本呼気時は力を使わないはずなので息を吐きにくい時は、肺の弾性によりしぼむの事が出来なくなっている事も考えないといけません。
あとは胸郭の可動性に問題がないかを見ていきます。
吐けるけども強く、長く吐けない場合は努力呼気に使われる筋力が弱っている可能性もあります。

胸郭の運動学

胸郭の動きを考慮する場合は以下をチェックする必要があります。
後方
・胸椎 Th1〜12
・肋骨 左右12対
・肋間筋、肋間膜
  前方
・肋軟骨
・胸骨
・肋間筋、肋間膜
  上方
・上位肋骨
・鎖骨
・頸部筋郡、筋膜
  下方
・横隔膜
・腹横筋
胸郭に関与する関節
・胸肋関節
・肋椎関節(肋骨頭関節、肋横突関節)
胸郭の、どの組織に制限が強いかを考えながらアプローチしていきましょう。

肋骨の動き

・上位胸郭(第1〜6肋骨)
ポンプハンドルモーション
ポンプのハンドルのように矢状面上で前後に動きます。
吸気時に前上方へ広がり、呼気時に元に戻ります。
・下位胸郭(第7〜12肋骨)
バケツハンドルモーション
バケツの持ち手のように前額面上で左右に動きます。
吸気時に上側方へ広がり、呼気時に元に戻ります。
これらの動きは、肋骨頭関節と肋横突関節を結んだ線が運動軸となっており、吸気時には肋骨が後方回旋します。
つまり、両関節に制限があると呼吸に伴う胸郭の動きも制限されてしまいます。

胸郭の運動パターン

胸郭の運動パターンを理解しておき、必要に応じて治療に組み込めるようにしておきましょう。

①胸骨後傾時に起こる運動連鎖

胸骨:後傾
肋骨:後方回旋、挙上

②胸骨前傾時に起こる運動連鎖

胸骨:前傾
肋骨:前方回旋、下制

回旋時に起こる運動連鎖

片側の胸郭・肋骨が同方向へ回旋すると、対側の胸郭・肋骨が相反した動きをとります。
体幹回旋時の肋骨の動きを確認して治療に組み込みましょう。
体幹右回旋
右上位肋骨後方回旋、左上位肋骨前方回旋
下位肋骨も同方向へ回旋するが相対的に逆回旋の位置関係となります。
体幹左回旋
右上位肋骨前方回旋、左下位肋骨後方回旋
下位肋骨も同方向へ回旋するが相対的に逆回旋の位置関係となります。

側屈時に起こる運動連鎖

側屈時に片側の上位胸郭・肋骨が回旋し、同側の下位胸郭・肋骨が相対的に逆回旋に位置します。
右側屈(胸骨右傾斜)
左上位肋骨:挙上・後方回旋
左下位肋骨:前方回旋
左側屈(胸骨左傾斜)
左上位肋骨:挙上・後方回旋
左下位肋骨:前方回旋
この3つの運動パターンや外見上の位置異常を元に、どこに制限があるのか特定していきます。
例えば腰痛の患者さんが
吸気時に胸骨が後傾が起きない。
このことから、肋骨は前方回旋が優位と考えます。
そして左回旋に制限が認められるとしたら、右回旋のパターンが優位で右上位肋骨は後方回旋、左上位肋骨は前方回旋が優位と考え、下位肋骨は相対的に逆回旋位置になると想定し、
胸骨は左傾斜していたら
右上位肋骨・左下位肋骨は後方回旋、右下位肋骨・左上位肋骨は前方回旋が優位と考えます。
その評価で共通する組織は何か?という視点で考えてみます。
本症例の場合は、左上位肋骨の前方回旋が共通している。
このことから、その胸郭・肋骨運動連鎖が何らかの影響を与えているかもしてないと仮説を立て、左上位肋骨前方回旋というパターンを改善してみる事になります。
胸郭と関連がありそうであれば、左上位肋骨の前方回旋を起こしている要素は何か?と考え、胸郭前面に付着する大・小胸筋や肋間筋が可能性として挙げられます。
これら筋群をリリースして胸郭運動パターンの正常化が起こると腰痛も改善されるのであれば、これら筋群が優位に働きすぎないように運動療法など指導すると良いかもと考えることができます。
胸郭の上位と下位の関係から、下位肋骨の後方回旋が優位にあって結果的に上位肋骨が前方回旋している?
左右の関係から、右肋骨の後方回旋が優位になりすぎている?
左上位肋骨の後方組織が硬すぎて後方回旋できる余裕がない?
等、仮説をいくつも立ててそれをどんどん検証していけば良いのです。

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おわりに

胸郭も運動パターンがいくつもあり、パッと判断できないこともありますが、日々考慮しながらアプローチしていると自然と覚えてしまいます。

胸郭の制限は胸椎のモビリティを落としてしまい、頚椎・腰椎のスタビリティを下げてしまい、脊椎疾患を進行させる原因にもなるので胸郭あるいは呼吸の評価は必要となる場合も少なくありません。

自分なりに臨床で応用してみてくださいね!

換気=横隔膜の収縮+胸郭の動きという事と、胸郭の運動パターンで共通する部分を探す事を念頭に置いてみましょう。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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